4月11日(日) 横浜能楽堂

狂言組 (和泉流 野村万蔵家)

お話し 小笠原由祠

『雷』

  シテ(雷)野村拳之介 アド(やぶ医者)野村万之丞 地頭:能村晶人

(休憩)

『貰聟』

  シテ(夫)小笠原由祠 アド(妻)小笠原弘晃 小アド(舅)野村万蔵

 

横浜狂言堂、2021年度シリーズ、12回の初回。今年度も通うことになりそう。

市松席だけど、それでも売れ残りアリ。

 

小笠原由祠さんは、タダシと読むが、以前は匡と書いた。何やら訳あって、2020年8月に音は同じで、由祠と表記だけ改名したらしい。由祠としては、初お目見え。萬狂言会(野村万蔵家)の関西代表。

 

『雷』、何度か。都で売れない医者(やぶ医者と自称)が、東の武蔵の野原に来ると、雷様が落ちてきて、負傷する。人間しか診られないと言うが、威されて雷を診察、治療。良くなったが、治療費がないというので、天と地の間の困りごとを解決する約束をさせる、というお話し。

シテ雷(武悪面)の登場シーン、幕内から、何やらドロドロドロと音。ピッカリ等はシテ雷が口上で。足でも踏みならしているのかもとは思ったけど、そうでは無さそう。やはり、何か鳴り物を使ったと思う。太鼓か何か。こういうのは初めて。囃子方以外の音響効果。

 

『貰聟』、これは初めてかも。酒飲みのシテ夫に、20回以上も離縁を申し渡され、そのたびに、シラフになってから、ご近所などの取りなしで元の鞘に戻っていたが、今回は、離縁の印に大切な腰のもの(小太刀)を渡されて、これは本気だと。実家に逃げて、小アド舅も今回は本気らしいから、もう戻らなくて良いと。

ところが、毎度のことで、酒が冷めてから後悔して、近所の外聞もあって仲介を頼めず、自ら妻の実家に迎えに行く。小アド舅は打ち合わせ通り、もうシテ夫に会わせないように、アド妻を隠すが、奥で聞いていたアド妻が、やはり好きなのか、一緒に帰ろうとする。面目丸つぶれの小アド舅は、なんとか阻止しようとするが、シテ夫とアド妻が組んで、小アド舅をやっつけてしまう。

 

最終的に、実の親よりも夫を選ぶ、というお話し。娘を持つ我が身としても、やや身につまされるが、そういうモノなのかしら。それで、良いのかもしれない。親より配偶者。生きる時間が違うからね。最後に親は頼りにはならない。

 

投げ飛ばされた小アド舅が、舞台正中で横になって倒れている。やがてむっくりと立ち上がって、既に幕内に下がっているシテ夫とアド妻に対して、悔しそうに「来年は祭には呼ばぬ」と捨て台詞、というか諦め台詞。

あれ、この台詞、どこかで聴いたことがあると思いきや、『水掛聟』の最後と同じ。田の水争いで、舅と夫がそれぞれ我田引水し、泥仕合までするが、最初は仲介的な妻が、最後は夫を選ぶ。その時の、舅の最後の捨て台詞が、同じく、「来年の祭には呼ばぬ」だった。

こういう義理の関係、多分舅の方が地域の中では実力者なのだろうが、祭に呼ばないと言うことが、サンクションになるのだね。地域の祭の大切さが解るというか。村八分はできないから、最大の楽しみ行事から閉め出すということかしら。

 

アド妻役の小笠原弘晃さんは、2001年生まれ、20歳か、由祠さんの長男。狂言師ではあるが、ドラマなどに出演が多いらしい。ボクは初お目見目ではないかしら。でも、しっかり狂言の演技。父を継ぐことになるのでしょうね。