3月12日(金) 横浜にぎわい座

開口一番 前座 桃月庵あられ 『金名竹』

桃月庵白酒 『親子酒』

五街道雲助 『五銭の遊び』

(仲入)

隅田川馬石 『鮑のし』

蜃気楼龍玉 『山崎屋』

 

この一門会は、昨年9月にもにぎわい座でやっていて、ブログでも絶賛している。その会が、再び開かれるので、当然チケット購入。コロナの市松席だけど、1階の最後列になってしまった。9割方の入場かな。

 

こうした五街道雲助の一門会は、にぎわい座だけのモノではないらしい。白酒のマクラで、あちこちと巡業でやっているような話しぶりだった。

登場順が、一番弟子の白酒、師匠雲助、仲入で、二番弟子の馬石、トリが三番弟子の龍玉だが、馬石のマクラだったか、この順番が決まってしまいますよ、後半は文句言えないですから、誰かお客が文句言ってくれないと、等と言っていた。

調べてみると、前回2020年9月の一門会は、馬石、雲助、龍玉、白酒の順だった。

ということは、前回とは違っているから、別の会でも一門会を系統的に行っているってことだよね。

 

この一門会の素晴らしさはいくつかあるけど、開口一番の前座が巧いんじゃ無いのか、ここで会場をぐっと盛り上げる。

桃月庵あられ。白酒の三番弟子だと。2020年9月の一門会でも、2021年2月のにぎわい座での白酒独演会でも、開口一番はこのあられ。

『金名竹』。関西弁で、主人への言伝を頼まれるが、早口で、関西弁で、何を言っているかわからないという、困った噺。関西弁での超早口が、聞かせどころだけど、あられは、ちっとも噛むことなく、立て板に水で喋り通し、感心した。とても、前座の力量では無い。前回の一門会でのブログは、前座よりは上手いよ、って書いてある。

出世は早いんじゃ無いのかな。ただ、めくりの時に、客席を睨み付けるようにして、少しでも動いている客がいると、座って落ち着くまで下がらない。白酒の指導なのだろうけど、もうちょっと怖くないようにしたらって。なんだか、落ち着かない。

 

白酒は『親子酒』。コロナ退院直後だとのマクラから入って、酒が飲めない、飲み助は大変だ、というところからの『親子酒』。

親子で禁酒を約束していながら、父親が我慢できずに、跡取りの総領息子も客先でベロベロになって帰宅する。その父親の、飲みっぷりというか、酔っ払いざまというか、仕草、口調が面白い。何度も聞いた噺だけど、面白い。上手だなあ。

 

師匠の雲助。相変わらずの貫禄で、初めて聴く『五銭の遊び』。廓の噺で、手持ちが五銭しかないのに、吉原の店に上がって、騙しながら楽しむという噺。

江戸っ子の語りが良い。江戸っ子の通の噺家だね。粋だ。雲助は、江戸の粋をそのまま持つって感じ。良いねえ。

顔の面が厚いを、面の顔がと、2度言い間違えてしまったが、でもさすがの実力。ご自分では納得いかないような仕草だったけど、大丈夫です。まだまだ上手いです。粋です。

 

ここまででもたっぷりと楽しんだが、馬石の『鮑のし』。長屋の与太の話で、金が無くて、おまんまも食えないので、かみさんに焚き付けられて、借りてきた50銭で、手土産を買って、大家の嫁取りの祝い口上を述べて、逆に1円貰って、50銭返して、残りの50銭で気ままにたらふく飯を食おうという算段。尾頭付きを買おうとするけど、金が足りずに、鯛では無くて、鮑を3個。それを持って大家に行くが、鮑は縁起が悪いと言って受け取って貰えない。磯の鮑の片思いだからね。

で、もう一度魚屋に行くと、冗談じゃねえ、鮑は熨斗の材料でめでたいんだ、と。早速それを伝えに再び大家に行く。

長屋に住む、ちっと足りない与太が、ワワシイ女房や、魚屋、大家に、好かれながら、見守られて生きているって。

良いねえ。こういう長屋ばなし。与太話。与太ぶりがキチンと出来ないと。単なるバカではダメで、愛すべきバカをどう語るか。

さすが、江戸語りの雲助の弟子。語りっぷりが、様になっている。

 

トリは龍玉の『山崎屋』。大店山崎屋の跡取りが、吉原通いが過ぎていて、大旦那から叱られている。若旦那は吉原の花魁に心底惚れていて、相思相愛で、一緒になれるならば、女郎遊びはしないに決まっていると。そこで一計を案じた番頭。狂言を仕組んで、ケチな大旦那を丸め込んで、見事に結婚させて、めでたし、という話し。

これも、あまり聴いたことがない噺かな。40分以上かけて、たっぷりと、語った。端折ってないと思う。

若旦那と番頭の掛け合い、番頭と大旦那の掛け合い、それぞれ人物像が浮かび上がって、とても面白い。色っぽさも含んで。

 

ほんと、この一門は上手揃いだなあ。それぞれが立派な師匠格の力量なのに、4人揃うのですよ。素晴らしい。

2日前の志らくが、あまりノリが良くなく、実は、この日も、緊急事態宣言が出ても新規感染者はむしろ増えている、大して面白くも無く落語会に行くのは如何なものか、等と考えていたが、いや~、行って良かった。

じっくり聴かせて貰ったり、大笑いさせて貰ったり、良かった。この木戸銭は安い。

また、この五街道雲助一門会があったら、絶対に、行く。地方までの追っかけはしないけど。