2月26日(金) 神奈川芸術劇場
作:木下順二
演出:野村萬斎
音楽:武満徹
配役:新中納言平知盛・野村萬斎
影身の内侍・若村麻由美
平宗盛・河原崎國太郎
源義経・成 河
阿波民部重能・村田雄治
梶原源太景時・吉見一豊
二位の局・金子アイ
その他
演劇など観るのは、いつ以来だろうか。
『子午線の祀り』、名前は聞いたことがある著名な劇だし、野村萬斎出演・演出も知っていたし、神奈川芸術劇場も行ったことがなかったので、発売と同時に即購入。なかなか良い席でした。
物語は、源平合戦で、一ノ谷の後、屋島の戦いから壇ノ浦の海戦までに至るまでが第1部、壇ノ浦の海戦の詳しい様子は、第2部でじっくりと。
平家物語を題材にしているし、その言葉というか詞章というかも、所々はそのままで、平家物語を読んでいる。
これが心地よい。琵琶法師の語りを、各役者が分担して、自分の関係する箇所を。
お能の鑑賞やお稽古で、平家物語は馴染みがあるし、「平家物語絵巻」は、高等遊民化の直後から読んでいる。まだ5巻という体たらくで、間隔が空きすぎてどこまで読んだのやら、どんな話しだったか、スッと出てこない。
配役には、役者名が解らないから書けなかったけど、悪七兵衛景清も出てきたりして。景清は、一種のマイブーム。
影身の内侍は、この劇で作った架空の人物だと思うけど。若村麻由美は美しい。
そも、子午線とは何か。これが解らぬまま劇を観る。
ネット情報で、「地球の赤道に直角に交差するように両極を結ぶ大円」だそう。まだ解らない。
南北を結ぶ、緯度線、これは無数にあるが、これが連続して作り出す大円、かな。
天文学では、地平線上の真北から天頂を通って真南へ至る天球上の仮想的な大円を子午線と呼ぶ。従って北半球では天の北極、南半球では天の南極が必ず子午線上にある。子午線は常に地平線と直交する大円として固定されているため地球の自転に伴って天球上の天体は日周運動を行い、子午線を通過する。これを子午線通過と呼ぶ。らしい。
何となく解ったかな。この演劇の舞台上には、半円形の廻る大道具があって、これが別れたり、回転したりしながら、場面設定をする。
また、舞台奥の中央定点には北極星が煌めいている。
壇ノ浦の、潮の満ち干は、勝敗に決定的な影響を与えたが、あの日は深月だったらしいが、それでも月の運動によって、潮の満ち干が天文学的に推測できる。東流と西流の時刻。大きさ。日に2度。劇中では、東経何度何分何秒、北緯何度何分何秒と、割と正確に示される。時刻も同時に。
そこを通る子午線と、月の西からか東への動きによって、この交差というか、相互関係によって、潮の満ち干と動きが決定されて、それに助けられて源氏方の勝利につながる。
義経は、当然この様な天文知識はないので、利用したという琴は出来ない。
天球と天空の動きによって、正に「お祀り」によって、壇ノ浦の勝敗、源平の勝敗、三種の神器の運命、幼い安徳天皇の運命が決せられて、以後の鎌倉幕府の形成へとつながり、日本国の歴史を作っていく。
天文学的運命論だけではなく、壇ノ浦海戦に関わる人物達、平知盛、源義経、淡路民部、梶原景時らの、考え、思惑が絡んで、一層の「お祀り」状態で、ごちゃごちゃと。そうして歴史は作られた。
そういうことですか、原作者の木下順二さん。
なるほど・・・
劇を観ている時は、そんなこと考えられず、今朝になってこのブログを書きながら考えたことです。
壮大な物語なのね。
会場で、パンフレットを1部1500円で売っていて、劇開始前にこれを買って読んでおけば良かったのかしら。
でも、買わなかったし。
まあ、平家物語の知識だけでも、楽しめたのでよろしいが、子午線の知識があれば、もっと良かったかも。
喜劇ではない、ホンモノの劇は、予備知識が必要なのかしら。