2月3日(水) 国立能楽堂

狂言 『粟田口』 (和泉流 野村万蔵家)

  シテ(大名)野村万蔵 アド(太郎冠者)野村萬 小アド(すっぱ)小笠原由祠

(休憩)

能 『杜若』 (喜多流)

  シテ(杜若の精)香川靖嗣 ワキ(旅僧)野口能弘

  笛:森田保美 小鼓:成田達志 大鼓:柿原弘和 太鼓:桜井均 地頭:友枝昭世

  面:シテ小女

 

今月の月間テーマが、「絵画と能・狂言」で、プログラムに相応しい絵画が掲載されている。

狂言『粟田口』は江戸時代17世紀の「狂言絵」から。能『杜若』は尾形光琳の「八橋図屏風」。なかなか美しい絵画が掲載されていて、よろしい。

再び、市松席に戻って、これは鑑賞しやすい。客はこれに慣れてしまったね。席を確保しづらいけど。

 

丁度、1月22日から3月26日まで国立能楽堂収蔵資料展「狂言資料展」が開催されていて、開会前に見学してきた。なかなか為になる資料展。翁に使う面箱(江戸時代後期)、式三番面黒式尉(室町時代)、神楽鈴(明治時代)なども展示されていて、興味深い。狂言古図では、狂言舞台が能舞台とは違って、白砂がない。庶民文化だったんだろうか。狂言面も多数展示されていて、例えば同じ「乙」面でも、大分違うのだね。戦後か、に売りに出されてしまったのを、収集したらしい。さすが、国立能楽堂。

 

狂言『粟田口』。何も知らない大名が太郎冠者に「粟田口」なるモノを買ってこい、太郎冠者も知らずに京に買いに行って、すっぱに騙される。粟田口生まれの人間だというのだ。ホントは太刀。シテ大名は、説明書を取り出し、アド太郎冠者を通して、小アドすっぱに、何カ所かの特徴を問いただして、全部合っていると信じてしまう。うれしくなったシテ大名は、小アドすっぱを、粟田口だと声を出しながら連れて外出するが、逃げられてしまう。その無念さと、諦め。あんなに喜んだのに。さすがの野村万蔵。

 

大御所野村萬は、安心のアド太郎冠者。人間国宝で、かつ芸術院会員。両方揃うと偉いのです。

芸術院会員で、能楽関係は、野村萬(部長)、梅若実、友枝昭世、山本東次郎、亀井忠雄の5名しかいない。全員人間国宝。狂言方が2名、能シテ方が2名、能囃子方(大鼓)が1名だ。

 

能『杜若』は3回目。初回は、まだブログ始めたばかりの2018年10月鎌倉能舞台で観世流。2回目は、ちょっと慣れてきたがまだまだの2019年7月能楽協会の納涼能。

在原業平の伊勢物語を題材にして、解説書のように、古歌が出てくる。勿論一番の有名古歌は、「唐衣 着つつなれにし 妻にしあれば はるばる来ぬる 旅をしぞ思う」。

ワキ旅僧が旅をしていて、三河の八橋について、そこでシテ杜若の精と会う、シテの物着後も、古歌の遣り取りと、まあ優雅な舞が続く。ワキの野口さんは、若々しくて、声も良くて大きくて。

今回の『杜若』は、感動という訳ではなくて、極めて優雅な、優美な、ゆったりした時間を楽しめた。気に障るような謡や舞は無かったどころか、夢幻の世界に誘われて。

地頭が、人間国宝兼芸術院会員の友枝昭世。今回は、5名中2名の登場だ。喜多流宗家預かり、と紹介されているのは何だろうか。

 

第2次非常事態宣言下の高等遊民の、優雅な時間でした。