1月10日(日) 横浜能楽堂

狂言組 (大藏流 茂山千五郎家)

お話し 茂山千三郎

『吸取』

  シテ(男)茂山茂 アド(何某)島田洋海 アド(女)茂山逸平

(休憩)

『宗論』

  シテ(浄土宗)茂山逸平 アド(法華僧)茂山千三郎 アド(宿屋)島田洋海

 

冒頭に、「茂山千五郎家」と記載したが、お豆腐狂言茂山千五郎のホームページによると、2020年12月「本年末をもって茂山千三郎が当家を離れます。」との記事がある。

ので、この日の公演は、お話しが茂山千三郎であることも合わせ考えると、千三郎家、と記載すべきかも知れない。が、この企画はずっと前から決まっていたはずで、茂山茂や、逸平も出演しているし、まあ、中間時点で、千五郎家とした。

この組み合わせは、今後なくなるかも知れない。でも、敵対関係では無さそうだから、今後も、一緒の舞台などは続くのでしょう。

 

お話しは、狂言や能における「腰の立て方」。為になった。

 

『吸取』。妻乞いの狂言はいくつかあって、大抵清水寺に参って、西門に現れるおなごが妻になる、のが多いようだが、これは、五条の橋元で笛を吹けば、現れる、というモノ。願掛けのシテ男が笛が吹けないので、友人のアド何某に代役を頼む。何度か観たが、今回は、アド何某役の島田洋海さんが自ら笛をホントに吹けるので、笛の囃子方不要で演ずることが出来る。

笛を代役で吹くと、現れた女は、最初代役のアド何某の方になびき、やっと願掛けのシテ男の方になびくが、衣かつぎを取ってみると、悪女の「乙」の面。ビックリして、今度はシテ男とアド代役で押しつけ合うというセクハラ狂言。二人とも逃げ去ってしまって、最後に、アド女乙が、「観世音の罰が当たるぞよ」と、捨て台詞。これでセクハラに対する罰の完了。

何度も観たが、この最後のセリフが、初めて理解できた、というか聞き取れた。

 

『宗論』も何度も。たまたま遭った、南無阿弥陀仏の浄土僧、南無妙法蓮華教の法華僧。それぞれ、善光寺と身延山の帰り。

言い争いになるが、浄土宗の方が、法華宗をなぶろうという積極的嫌がらせ。浄土宗の方が、当時は優勢だったのだろうか。

互いの法論は、やはり聞き取れない部分もあるが、最初から相手のことを聞く耳などないから、浄土宗が納得するはずもなく、法華も論破しきれない。

翌朝、踊念仏の浄土宗と、踊題目の法華宗。やりあっている内に、つい間違えてしまう。

最後の、オチが、「南無妙阿弥陀仏」の合掌となる。これで両宗が、対立ではなくて、連合でもなくて、共存となる、という素晴らしいモノでした。

これも、今回、初めて、聞き取れた、理解できた。これでめでたし、めでたしの狂言でした。

 

第2次非常事態宣言下、初めての横浜能楽堂。アナウンスで、不安な方は事前にキャンセル電話すれば、払い戻しに応じるという特別態勢。もう売ってしまっている公演は、全部中止返金になると、大変な手間と損害だからね。

やはり、能楽は高齢者が多いからか、3分の1くらいに見所が減っていたが、それでもお着物の方もいらして、様々ですね。

暇な年金生活者・高等遊民としては、こういうことでも、開催していただけるとありがたや。