当初の記事に、一部不正確な部分があったので、その部分を撤回して、再投稿しました。
12月6日(日) 中野能楽学院会館
お話 梅若長左衛門
仕舞 地頭:松山隆雄
『蝉丸』 土田英貴
『鉄輪』 梅若長左衛門
『野守』 山崎正道
『船弁慶』 角当直隆
独吟 『弱法師』 梅若実(但し、録音)
(休憩)
能 『葵上』・古式 (観世流 梅若会)
シテ(六条御息所ノ生霊)梅若紀彰 ツレ(照日巫女)小田切康陽 ツレ(青女房)山中迓晶
ワキ(横川小聖)大日方寛 ワキヅレ(臣下)御厨誠吾 アイ(臣下の下僕)山本則重
笛:松田弘之 小鼓:飯田清一 大鼓:亀井実 太鼓:林雄一郎 地頭:山崎正道(梅若実から交代)
面:前シテ 泥眼 後シテ 般若
コロナに負けない梅若会のトライアル公演。なんと言っても、紀彰先生がシテの『葵上』だから、必ず出席。全席自由席で、市松席で、1時間前の開場だから、開場と同時に飛び込んで、正面の前方の席を確保。それでも、ワタクシより前に来ているお客様が結構いて、正面の中央とか、最高の席は取れない。人気ですねえ。
もともとそんなに大きくはない会館なのだけど、半数程度で、満席でした。
梅若長左衛門さんのお話は、普通の解説。
仕舞4曲。こちらもお稽古で盛り上がってくると、いずれも習ったことのないお仕舞いだけど、何となく、見どころとか、足使いや、腕使い、が気になる。
この4人のシテ方と、それぞれの曲選び、順番はどうやって決めているんだろうと言うことも気になった。
『野守』の山崎さん、『船弁慶』の角当さん、動きが激しい仕舞で、人気曲なので、それだけで観ているのは楽しいのだけど、くるっと回って座るところとか、戦いのシーンの大きな舞とか、良かったと思う。
失礼ながら、『鉄輪』の梅若長左衛門さん、この日の、この仕舞っていう緊張感がなかったような。日常的なんでしょうか。年齢なのでしょうか、経験なのでしょうか。
若手というか中堅の方の仕舞は良かった。お仕舞いをしながら、口の中で謡を謡っている様子が見られて、参考になりました。
独吟『弱法師』を梅若実さんが謡う予定だったが、体調不良とかで、欠席。長左衛門さんが「私が替わっても良いのだけど、観客が許さないだろうから、実先生に替われる人はいないから」と、録音で。
録音じゃ、CDやラジオで聴けるから、生が良いに決まっています。多分、紀彰先生が続く能のシテをやらなければ、交替できただろうし、むしろ紀彰先生の独吟を聴きたかったです。
録音で、という選択は良かったのかな。飛ばしてしまっても良かったのではないかな。
梅若実先生は、12日(土)に川崎能楽堂で『夜討蘇我』のシテ、20日(日)に国立能楽堂で、三人の人間国宝~祈り~と題する特別公演が予定されていて、一調一管の謡と、創作能の舞を演ずる予定だ。その2つのために大事を取ったのだろうか。
足腰を痛めて、舞はかなり困難になっているけど、11月11日には、国立能楽堂と、相模原と、連続の謡をしていて、相変わらず素晴らしいお声だと。それが、謡も休まざるを得ない状況なんかと。大丈夫でしょうか。疲労程度ならば、お休み頂いて、窮屈な連続出演は差し控えればよろしいだけなのですが。
能『葵上』。2回目。最初は、2019年1月に、横浜の久良岐能舞台で。喜多流。感激したとブログにある。
それだけじゃなくて、ユーチューブにも2本上がっているし、まあ源氏物語の有名な話しだから、予習は十分すぎた。
今回は、「古式」という小書き付き。青女房が前シテのツレとして登場するし、舞台上に、葵上を示す小袖が正中先に置かれるのは著名だけど、加えて、作り物の破れ車が大小前に。それに関連して、前シテの動きや詞章も変化があった。
で、今回は、常の「梓之出」と、どこが違うのだろうかと言うことばかりに注目してしまって、折角の紀彰師の謡や舞への集中力を欠いてしまった、悔しさかな。
小書きとは関係なかろうけど、舞台上で物着をしないで、中入で、幕の奥に下がってしまうのも、そんなことも、あれっと思ったりして。勿体ない。
それでも、前シテが登場してくる時のハコビは美しいし、葵上の小袖に向かって、扇をうち捨てる様、打擲する様、執念というか執着というか、高貴な身分でありながら、そうせざるを得ない様子や苦悶はよく現れていました。
「泥眼」面が好き。
葵上の小袖を打とうとする時、ツレの青女房が止める様には、ああ、小書きだ、と余計なことを考えてしまう。
般若になってしまった後シテとワキ横川小聖との戦いも、止められながらも、杖で打ちかからなければ治まらない気持ち、そうしてはいけないという気持ち。
「般若」の面の角度で、よく現れていました。この『葵上』のシテは、前も後も、面の扱いが重要ですねえ。特殊な面でもあるし。
この面や、装束付けについて、梅若会ユーチューブで紹介されていて、とても参考になった。
でもでも、それなのに、ピリッとした緊張感と、とめどもない感動には包まれ得なかったのは、何故か。今年観た紀彰師の舞台、『翁』や『紅葉狩』の飛び抜けた感激、感動には及ばず。
小書きに気を取られすぎて”違い”にばかり気が行ってしまった、当方の体調が今ひとつだった(ちょっと親族に気になることがあって精神的に)、地頭が梅若実師から山崎正道さんに代わった、ことなどからかしら。
来年1月から2月にかけて、梅若紀彰師のシテやツレが、わかっているだけで3回あって、全部チケットの手配はしている。そんなお忙しい中で、お稽古付けて頂いたり、お稽古発表会までしていただくのです。