11月21日(土) 川崎能楽堂
講師:観世流梅若会(シテ方) 角当直隆 伶以野陽子
行政が主催する能楽の会には、おそらく普及のために、事前講座を催すことがある。税金を使った事業なので、古典芸能の普及のために、単に能楽会を開催するだけではなくて、事前講座を設けて、能楽の会への参加を促すと供に、能楽のファンを増やすという目的だろう。
これまでも、度々こうした催しの案内を頂いたが、今回は、梅若会であること、たまたま時間が合ったこと、から、参加してみることにした。
川崎能楽堂は、昨年3月に能会に参加して以来。
まず、曲目解説と直面について。
角当直隆さんが開設して、伶以野さんがお手伝いという役割。先輩後輩なんだね。角当直隆さんは、梅若界の重鎮角当行雄さんの子息で、子方当時からの経験者。
曲目解説は、つまらない。まあ、ストーリーは知っているからと、やはり、おしゃべりは上手ではない。紙を見ないで話していたので、話し慣れないと、纏まらないのですよ。
あの時代の暗闇をどう表現するか、どういう行動になるか、衣かずきだと見えないと言うこと、白っぽい衣装だとボーッと見えるだけかも、成る程と。
その中で、戦うのは実際は困難なんだねえ。逃げるのは割と簡単かも。
今回の曲が、『橋弁慶』と『夜討蘇我』なのだけど、その演目に決まった経過をちょっと話していて、これが面白かった。
川崎能楽堂では、毎年観世流梅若に依頼する能会が伝統のようになっているのだけど、今年はコロナもあって、実際に開催できるのかなかなか決まらなかったこともあり、開催することが決定的になった段階で、「お脇」と言っていたけど、ワキ方で、その日(12月12日)に予定が空いている方が1人もいなかったそう。1人も、と強調していたから、ホントにいなかったんでしょう。
そこで、ワキ方が出演しないで行える演目を2曲選ばねばならなくなって、梅若実師匠に相談して、2曲とも、直面で、ワキ方の出ない、『橋弁慶』と『夜討蘇我』と決まったらしい。
ああそういう経過で曲が決まることもあるんだあ。主催の川崎市文化財団としては、観世流梅若会に、能会の実行を連絡して、後は梅若会にお任せと言うことなんだなあ。その梅若会の窓口が、多分、角当直隆さん。
ここからは想像だけど、実師匠と相談しながら、曲やシテ方も決めると言うことなんだろう。梅若実さんは、腰と脚が悪いから、『夜討蘇我』の十郎を選んだのだと思っていた。そこが決まって、同じような戦いの曲として、『橋弁慶』が決まったんじゃなかろうかと思っていました。ところが、ワキ方不在が決定の主要な理由か。もし、ワキ方がおられたら、実さんは、どういう曲のシテにしたのだろうか。例年、シテ方は実さんと、角当行雄さんに決まっているのだろうか。梅若紀彰師がシテ方で出演されることはないのだろうか。
体験として、チャンバラをやってみるという。『橋弁慶』中の、義経の長物と、弁慶の長刀の戦いの、最低の決まり。3合するだけなのだけど。伶以野さんは、長刀扱いは習熟していないとらしいので、義経役で、見本をまず。
体験学習の希望者いませんか、と言うので、チャンバラはやったことがないな、と思って、パッと手を上げて参加。白足袋を貸して頂いて、舞台に上がる。
戦うシーンで、太刀を打つ。左足をやや開いて、半身にして、敵に向ける。右に太刀を振り上げて、左手を大きく開いて添える。左足に重心を移しながら捻って、引いていた右足を前に出すと同時に右手に構えた太刀を振り下ろす。1合。右に回して横から払うように2合目。左に回して振って右に向かって打って3合目。これだけだけど、こういうお稽古はできないから、面白かった。
それでも、何かカマエが多の参加者より良かったらしく、習ったことがあるんですか、と聞かれてしまった。お稽古中とだけ答えておいたけど。
これで体験はお終いだと思ったらば、摺り足をやりましょうと。おお、基本だ。ワタクシは、ついカマエの腕にしてしまって、摺り足のハコビ。何だか、新鮮だ。一瞬迷ったけど、紀彰師にお稽古付けて頂いているのに、良いんだろうか。でも同じ梅若会だから良いか、と。基本だから、同じ指導です。
この様子は、後日配信されるという。良いんか。
仕舞『橋弁慶』の実技。地謡は、テープで。
質疑応答で終了。聞きたいこともあったけど、ここは我慢をしなければならないと、ぐっと押さえて。
1時間半の事前講座で、体験付きで、仕舞も見られて、無料だから、まあ、良いんじゃないのかしら。
12月12日に、本番を見ましょう。