11月6日(金) 横浜にぎわい座
開口一番 柳亭市松 『道灌』
『雛鍔』
ゲスト 瀧川鯉朝 『あいつのいない朝』
(休憩)
『たちきり』
なるべく暗くならないうちに家を出る。郵便局によって、またまた能楽チケットの代金を振り込んだりしたのです。
開口一番は、名乗らなかったが、柳亭市馬の弟子らしい。話し始めは、あれまた『つる』かいなあ、と思うほど、そっくり。ああ、『道灌』かと気づくのは、ちょっと経ってから。同じだよね、初めは。
「七重八重 花は咲けども 山吹の 実の(蓑)一つだに なきぞ悲しき」
落語も和歌で、良い感じ。落語は下手だけど・・
三三の『雛鍔』。何度目か。さらりと、三三らしく。大爆笑を取れるネタだけど、そうはしないのね。
ゲストの、瀧川鯉朝。初めてまみえる落語家。なんだか妙な落語家だ。春風亭だったが、師匠が死んでしまって、瀧川に移転したらしい。まだ二つ目だったから。
半分くらい、なんだかんだ、大して面白くもないマクラというかおしゃべりして、15分で新作落語。
薬局の象の置物、ディスプレーというのか、サトちゃんだって。もう一つ、蛙。ケロちゃんというのかと思っていたら、コロちゃんだって。ホントらしいね。それが商店街で向き合わせで、サトちゃんがドラッグストアー、コロちゃんが昔ながらの薬屋。毎日毎朝喧嘩している。コロちゃんの方が閉店になって、リサイクルに引き取られて、小型の白いサトちゃんに生まれ変わって、戻ってくる、というお話し。別に面白くもないけど、観点としては、ああそういうのもあったな、と言う懐かしばなし。
別に、という感じ。この落語家も、別に。
待ってました!『たちきり』。1本の線香が立ったまま切れる(消える)と芸者のお直し、という次第。完全な売春女郎やでも「お直し」はあるけど、こちらに登場する芸者は、ホントに芸主体。勿論、深い仲にはなるけど。それが目的ではない。
若旦那が、その芸者に入れあげて金を使いまくって、番頭に蔵に100日間閉じ込められてしまう。その間80日までは手紙が来ていたが、ぱったりと途絶えてしまう。恋煩いで死んでしまったのだ。蔵を出てそれを知った若旦那は、置屋に行って、確かめると、白木の位牌。それを女将と眺めていると、どこからか、若旦那が好きだった三味線の「黒髪」が流れてくる。実際に弾いていました。でも突然消える。どうしたんだと若旦那。仏壇の線香の火が消えましたよ、でオチ。
良いねえ、こういうしんみりした噺。所々、笑う箇所もあるけど、特に後半は、しんみりしんみり、ぐっと語り込む。三三は、こういうの得意さあ。落語家ではなくて、噺家と。
三三のは、ここ4回ほど聴いているけど、みんな、こういうしんみり、人情噺というか、爆笑もんじゃない。
隣のオヤジが、会場全体がシーンとなって聞き惚れているところに、背負ってきたリュックのチャックを閉める音。ジー。アホめ、静かにせんか。この話の良さがわからんか。そういえば、前も、いびきをかいて寝ていたやつがいたなあ。三三の高座には、不似合いだよ。
登場する「黒髪」。今、ユーチューブで聞きながら書いているけど、良いなあ。こういうお三味を聞きながら、しんみり、酒を飲む。
できれば、こういう芸者遊びをしてみたいモンだ。今は、こういう芸者はいないのだろうね。
金もかかるだろうし。