11月4日(水) 国立能楽堂
狂言 『若市』 (大藏流 山本東次郎家)
シテ(住持)山本則孝 アド(若市)山本泰太郎 アド(告げ手)山本凜太郎 立衆(尼)山本則重、他
笛:槻宅聡 小鼓:林吉兵衛 大鼓:佃良勝
(休憩)
能 『龍田』 (金剛流)
シテ(巫女 龍田明神)廣田幸稔 ワキ(旅僧)大日方寛 アイ(里人)山本則秀
笛:槻宅聡 小鼓:林吉兵衛 大鼓:佃良勝 太鼓:小寺佐七 地頭:種田道一
今回11月から、市松席を改めて、全席販売。但し、正面、脇正面、中正面とも第1列は空ける。特に正面席には空席が目立つ。まだまだ観客は戻ってこないか。それとも、演目に寄るのか。
狂言『若市』は初めて。とても面白い狂言。
シテ住持(浄土真宗の僧侶で、「聖人」と言うらしい)が、綺麗な菊の花を持つアド若市(きっと、妙齢の尼さんなのです。ニャクイチと読む。)に、自分の花壇から盗んだなと難癖を付けて、取り上げて、その場で捨ててしまって、打擲までする。その復讐に、尼連合軍を仕立てて、住持の寺に押しかけて住持らと戦う。詞章では尼軍は300名。小槍などで武装。対する住持らは棒で武装。戦いの結果は、尼軍の勝利。住持の帽子を奪ってしまって、逃げ去る。
面白いでしょ。狂言では、ワワシイ女などと、大抵女性が強いのだけど、実力行使はあまりない。しかも、勝利してしまうのだ。
シテ住持は、妙齢の尼であるアド若市が、最近、新発意のところばかりに通う、と嫉妬しているのです。
山本東次郎家だけど、東次郎さんの出演は無いな、と事前プログラムを眺めていたら、なんと、後見で登場。後見座に構えるだけで、一気に、舞台がぐぐっと締まる雰囲気。さすが・・
戦いのシーンでは、囃子方も入って、賑やかに。
休憩は、また25分間。狂言も25分だから、ねえ。
国立能楽堂の、来年の壁掛けカレンダーを買う。以前は、山と渓谷社の山岳カレンダーを使っていたけど、今年から、お能のに変えようと。
能『龍田』も初めて。前場は、和歌読みが中心で、後場は舞。
ワキ旅僧が、奈良の龍田明神を訪ねる。そこの龍田川を渡ろうとすると、幕の内から前シテ巫女が渡ってはならぬと声を掛ける。神慮をはかれ、と。気付いたワキ旅僧は、
「龍田川 紅葉乱れて流るめり 渡らば錦(にしき) 中や絶えなん」
と謡って、だけど、今は、薄氷が張っているから、良いじゃんと。そこで、前シテ巫女は、
「龍田川 紅葉を閉ずる薄氷 渡らばそれも 中絶えなん」
と謡って、諫める。前の和歌が古今和歌集の詠み人知らず、後の和歌は、それの本歌取りの藤原何チャラの和歌。
教養がある。前シテ巫女は、実は龍田姫だといって、作り物の御殿に入ってしまう。
神前に通夜をしてお告げを待っていると、後シテ龍田明神が現れて、神楽などを美しく舞う。山河草木国土を治めようと、神は空に去る。
このときの、装束が、緑色を主としていて、美しい。舞も美しい。なんだか、金剛流はあんまりね、と前回思っていたけど、今回は、シテが上手なのだろうが、綺麗な舞と声。地謡も、5人だけど、力一杯で素晴らしい。囃子方は、早い内から太鼓が出てきて、これもよろしい。
密を避けるためか、面の紹介がないのが淋しいけど、仕方ないか。金剛流には良い面があるはずなのだけど。
高等遊民、和歌のお勉強もしたいなあ。
詠み人知らずの意味は色々あるらしいけど、本曲の詞章には「帝の御製」とある。
龍田川の紅葉は有名だよね。
在原業平の「千早ぶる 神代も聞かず龍田川 唐紅に 水くくるとは」。これは、面白い落語にもなって。
桜の花見も良いけど、梅の花見がもっと良い。秋は、月見の宴と紅葉狩。日本人の、四季を観ずる、四季を愛でる心かな。
今年は、紅葉狩にでも出かけましょうか。近場では今月の中、下旬かな。