10月31日(土) 国立能楽堂

解説(英語) 伶以野陽子(シテ方観世流梅若)

狂言 『柿山伏』 (大蔵流 大藏宗家)

  シテ(山伏)大藏教義 アド(畑主)大藏基誠

(休憩)25分

能 『紅葉狩』・鬼揃 (観世流 梅若家)

  シテ(女 鬼)梅若紀彰 ツレ(侍女 鬼)角当直隆・川口晃平他

  ワキ(平維茂)舘田善博 ワキツレ(従者)森常好 他

  アイ(供女)茂山忠三郎 アイ(武内の神)大藏忠三郎

  笛:藤田次郎 小鼓:吉阪一郎 大鼓:大倉慶之助 太鼓:大川典良 地頭:角当行雄

 

国立能楽堂主催公演のハズなのだけど、10月のプログラムには載らず。でもでも、我が師匠紀彰先生がシテを勤められるので、これは常の国立劇場あぜくら会のネット予約では無くして、紀彰師経由で購入。国立能楽堂で初めて正面席。

 

解説は、外国人のための、と言うだけあって、英語。勿論字幕パネルでは日本語も。伶以野さん、ノートに英訳文を書いてきていて、読みながらだけど、自分の訳なのでしょう、上手に英語を使っていました。実際には外国人はほとんどいなかったけど。でも少しはいて、そういう意味では初心者もいて、まあ役に立った企画では無いでしょうか。

 

狂言『柿山伏』は何度もだけど、外国人向けには解りやすい曲。大蔵流は、ワキ柱に寄りかからず、触らず、葛桶の上に立つだけで、烏や猿、鳶の真似をするので大変だ。落ちやしないかと、観ていてヒヤヒヤだけど、大丈夫でした。

 

最近は、コロナの影響か、休憩が25分もあって、女子のトイレには都合が良かろうが、やや間延びと退屈。

 

『紅葉狩』、謡で習ったが、能としては初めてです。今回は「鬼揃」の小書き付き。シテツレが5人、シテを入れて6人が、美しい装束で登場する華やかさ。全員面を付けているので、誰がシテ紀彰師か判然としない。足の運びやカマエの姿で判断しようとするが、間違えたかも知れない。

物語は、信濃国戸隠の山の中で、さる御方らが紅葉狩りをしているところに、ワキ平維茂らが鹿狩りに通りかかって、誰だか解らないけど上﨟なので邪魔をしないように通り過ごそうとするが、さる御方からどうしてもと勧められて酒を飲んで寝てしまう。実は、それは鬼であって、平維茂を殺そうとするのだと、アイ神のご宣託。太刀を渡されて、起こされて、鬼と戦って、蹴散らすという、前場は美しく優雅に、後場は戦闘シーンというモノ。

前場で、シテ、シテツレらが謡を謡うと、この段階で、声で誰が紀彰先生か直ぐに解る。良い声だ。謡の節は、習ったモノ通りだ。ワキ維茂が加わって、宴会になって、シテ、シテツレらが美しく舞う中ノ舞。これが美しい、華やかだが、シテツレだけの舞では、あれ、型どおりの舞が多いのだけど、サシの右腕がもっと上がって張らないと、とか、ヒラキでも左腕が張らないととか、気になって仕方が無い。前シテ女紀彰師の舞の番になると、これはホントに美しく、大きくて、見応えがある。

ワキ維茂が酔っ払って寝込むと、テンポが上がって、華やかではあるけど、調子の良い前シテの舞。ここで、思わず、美しさとかっこよさに目頭が・・。紀彰先生の、謡と舞はホントに素晴らしい。

仲入でアイ武内の神が語るのだけど、大藏吉次郎さんは、ご高齢の上に、面を付けているので、何を話しているか聞き取りづらい。

後場での戦いは、詞章通りに組んだり、巌に登ったり、引き下ろしたり、結構激しく後シテ鬼が舞う。これも綺麗だ。

そのシーンの前に、鬼が揃って橋掛かりから登場する時に、鬼の杖を右手で捧げているのだけど、皆さん同じポーズのようでも、杖の角度や上げ方に若干の違いがあって、紀彰師の杖構えが一番美しい。角度や何やら、細心の注意を払っているのだろう。どうしたら一番見栄えが良いか、怖そうか、強そうか、美しいか。いつも教えて頂いているとおりで、これが一番だと、素人弟子だからでは無く、そう思う。

案外単純に負けてしまって、シテツレ鬼らは幕へ、意外にも最後まで戦った後シテ鬼は切り戸口に退散。残ったワキ維茂が留め踏み。

詞章はほぼ頭に入っているので、舞や舞台上の動きに集中できる。ここまで行けると、ホントのお能は面白いと思う。一緒に謡いたくなるのを止めて。地謡の謡い方は、ちょっと違うんじゃないのとも感じたりして。やはり、地頭の役割は大きいのだと思う。シテと地頭は同時にできないもんね。

とにかく、紀彰先生の姿は美しく、格好いいのでした。声も良いのでした。

 

お稽古には、もっときちんとしないとと改めて思う。勿体ない。