10月16日(金) 国立能楽堂
狂言 『引括』 (和泉流 三宅家)
シテ(夫)三宅右近 アド(妻)三宅右矩
(休憩)
能 『船弁慶』・船中之語 (金春流)
シテ(静 平知盛ノ霊)高橋忍 子方(源義経)中村千紘 ワキ(武蔵坊弁慶)森常好
アイ(船頭)三宅近成
笛:松田弘之 小鼓:森澤勇司 大鼓:白坂保行 太鼓:前川光範 地頭:金春安明
面:前シテ「小面」 後シテ「怪士」
国立能楽堂も、コロナ対策に慣れてきて、入場時の検温と消毒、座席の市松模様、退場時の時差などスムーズに。観客も粛々と。人数半分だけど、常連さんも戻ってきて。というか、新規見所は少ないか。
狂言『引括』は、初めてか。似たような曲はあるが。わわしい妻をめとって6年ほど経って、離縁したいのだが言い出せない。実家で休んだらどうか、2~3日から、2~3ヶ月、最後は10年、20年でもと。ここで、ワワシイ妻も気付いて、要するに離婚したいのでしょ、男らしくはっきり離縁と言え、と。そこまで言うならば離縁してやる、証はなんでも好きなモノを持って行け、と。中くらいの大きさの袋にくれ、というから、シテ夫はそんなモノか、何杯でも持って行け、と笑い飛ばすと、なんとアド妻は、袋をして夫の頭に掛けてしまい、ヒモで縛って、持って行ってしまう。憎いやつの、許されませ。
これで15分。満を持して、大体開演の1時間前には着いて心落ち着かせているのだけど、わずか15分で終わってしまって、更になんと25分の休憩。おやおや。次の能『船弁慶』が90分と。これくらいならば、休憩なしで繋げてしまった方が良いんじゃないか。
能『船弁慶』、5回目。『羽衣』が6回。『船弁慶』は来月もあって、これで6回に並んで、最高観能回数。だから、ストーリーは、良く解っていて、違いがわかるようになってきた。
金春流は、あまり、好きになれない、というか、失礼ながらあまり感動するような舞台にならない。地謡も5人1列で、例の一反木綿の口覆いを使う。でも、今回のシテは、なかなかのモノでした。高橋忍さん。1961年生まれ、59歳か。声がよく出ていて、よく聞けて、舞も振れること無く。老成の名人も良いのでしょうけど、若いシテ方も良いんではないか。
今回の小書き「船中之語り」は、船中でワキ弁慶が、問われるままに子方義経の奮戦ぶりを語るというモノ。ワキが覚えるのも語るのも大変だね。森常好さんは、数多い公演だろうけど、珍しい小書きかも知れず、勉強したのでしょうか。
アイ船頭は、どうしても、東次郎さんで観た印象が深く、強く、比較してしまうと、やはり迫力が無いよねえ。演技がくさい。
後シテ平知盛幽霊、戦いの舞なのだけれど、これは、どうしても以前に観た梅若紀彰師シテの時と比べてしまう。2019年7月。あのときは、良く解らなかったけど、今から思い出せば、紀彰師は舞は絶対的に上手だったんだ。爪先立ちして移動する時の高さが違う、膝をつくシーンでも(失敗してしまったけど)飛び回ってから膝をついた、退場時もくるくる回りながら橋掛かりを出ていった。
今回はどうするかなと思っていたら、舞台上で舞は終了させて、留め拍を踏んで、後は普通に退場。
いやあ、お稽古付けて頂いている梅若紀彰先生は、舞が、上手と言っては失礼だけど、上手。直接素人でも指導を受けさせて頂いて、幸運だなあ、と。そういえば、クラシックなどとコラボして舞もやるもんね。
謡もうまいし、声も良いし、舞は綺麗で大きくて、型が決まっているし、どうして・・・
他流、他のシテ方を観て、梅若紀彰の素晴らしさを実感してしまう。