7月9日(木) 関内ホール
レクチャートーク 野村萬斎
『水掛聟』
シテ(舅)石田幸雄 アド(婿)深田博治 アド(女)内藤連
(休憩)
『靭猿』
シテ(大名)野村萬斎 アド(猿曳)野村万作 アド(太郎冠者)野村裕基 アド(小猿)三藤なつ葉
当初期日が、この日に延期になって、更に、一旦全額払い戻しになり、さらに、同日ソーシャルディスタンス版で、やっとできた公演。
チケットがあちこちになって、大変。関係者も見所も混乱したけど、なんとか、やっとこさ開催できた。
座席は、市松模様。入場に当たって、検温、手指消毒の徹底は、横浜市の公共施設なので厳格。
萬斎のレクチャートーク。彼は、間違いなく狂言界のエンターテイナー。おしゃべりが上手。原稿も見ないで、さらさらと。
この4ヶ月の生活は、お休みだったとか。その間、哲学というかいろんなことを考えていた。どうして、お客さんはこうして劇場に出かけてきて狂言を観るのだろうか、役者はどうして出かけて演ずるのだろうか、等など。彼は頭脳明晰なので、色々考えるのです。
また、ネット配信なども試みたり、新しい方法も。だけど、やはり舞台がよろしいと。役者と見所の相関関係。
でも、ソーシャルディスタンス版だと、端的に言って、「半分になる」と。「何がって、わかりますねえ」。上手に客の心をつかむ。
演目の紹介も、上手なモノ。
『水掛聟』2度目かな。田に入れる水の、舅と婿の争い。水掛け論になって、泥仕合になる。そのまま。
間に入って仲介しようとアド(女)が出てくるが、妻であり、娘。さてどっちに味方するか。ウロウロするが、最後は夫に従う。水乞いの祭には出さんぞという捨て台詞を舅が吐いて、お終い。
さすが、野村万作家で、中堅どころの役者だが、しっかりと。安心して鑑賞できる。
能舞台以外では初めて見た。あれ、狂言を能舞台以外で観るのも初めてかな。鏡板がないのだけど、その代わりに、この曲では、青空と白い雲のバック。水不足ではあるが、まもなく雨も期待できそう、という風景。丁度、水無月(6月)頃の話でしょう。
『靭猿』。これは3回目。
2019年4月に万作の会。今回と配役が違うのは、太郎冠者高野和憲で、今回は、裕基君。
2019年10月に忠三郎の会。大名が茂山忠三郎。猿曳きが大藏吉次郎、小猿が忠三郎の長男良倫くん、5歳。
萬斎の迫力ありユーモアたっぷりになる大名。小猿を可愛がる万作爺さん。可愛い、可愛い孫(3女の長女だって)なつ葉ちゃん。太郎冠者は、万作の長男裕基くん。裕基君がイマイチだったけど、緊張したか、シテ大名萬斎やアド猿曳万作は、ベテランで、自在。
とにかく、みつ葉ちゃんが可愛い。まあいつもの仕草、芸なのだけど、それを見守る万作爺さんは、猿曳きと手塩にかけた小猿の関係だけではなくて、爺さんと可愛い孫。
猿曳きと小猿は、親子でやるよりも、爺さんと孫の方が、情感が直接感じられて良いかな。しかも、血の繋がった関係。こっちの都合かな。みつ葉ちゃんは5歳だそうで、我が孫娘は6歳なので、本気で、孫が演じている実感になるし、それを見守る猿曳き爺さんは、自分のことのよう。
裕基君も小猿を演じたことがあるのだけど、その時の大名はどっちか。猿曳きはどちらか。
前回は、小猿の可愛い演技にうるっとしたけど、今回は、最後に、猿曳き万作爺さんの背におぶって、退場する小猿孫が愛おしくて、涙、涙。
孫をおんぶするって、良いんだよね。孫は手を首に回して、爺さんは孫の両足を抱えて。安心して。つかまって。
地謡が4人登場するが、全員、目立たない色のマスク着用。お能とは違うか。ホールと能楽堂の違いか。
爺さん高等遊民には、泣かせる狂言。