6月3日(水) アルテリオシネマ川崎
監督・主演(シェイクスピア役):ケネス・ブラナー
2018年作品
非常事態宣言の解除によって、映画館も、対策を採りつつ始まって、アルテリオシネマも、6月2日から上映再開。座席数が半減されて、一席ごとに座れないようにテープ。
3月22日(日)に、国立能楽堂で開催されたお能の「三人の会」以来、2ヶ月半ぶりに劇場に出かけた。
別に、この映画を目指して出かけた訳では無いが、観た感じは、よろしい、と。
監督主演のケネス・ブラナーは、ロイヤル・シェイクスピア・カンパニー出身で、シェイクスピアにはゾッコンらしく、まあ力の入った作品なのでしょう。
そのせいもあって、映画中の英語は美しく、聞き取りやすい。アホバカトランプの、下品で、粗野な、巻き舌英語を聞いているのとは大違い。気分がスカッとする。
また、劇中で、シェイクスピア作品が読み上げられるシーンも多く、その言葉(台詞?)は、初期近代英語と言うらしく、現代英語とは若干の違いがあるが、イングランドの知識人は、当然その言葉(台詞)は知っているだろうから、そういう知識が無い私よりも、数段楽しるたはずだ。
初期近代英語といえば、高校時代の英語教師がクイーンズイングリッシュを話したがる人で、授業中に、シェイクスピア作品では、2人称単数形は、YOU ではなく THOU というと教わったことを思い出しつつ、懐かしかった。あの時代の高校は、受験勉強など無く、教師も自由に教え、生徒も楽しんで学んでいたなあ。大学は、一浪してその一年間勉強すれば良いんだ。
I FOLLOW THEE 私はあなたに従うって言うんだと。THOUの目的格ですね。なんか格好良くて、記憶に残っていて、そんなところから英語が好きになるのです。好きになれば成績も伸びるのです。
ストーリーは、1613年にグローブ座が焼失して、座付き戯作者であったシェイクスピアも、筆を折って故郷ストラッドフォードの田舎に帰り、その家族と過ごす有様と葛藤を描いたもの。
その当時の家族は、8歳年上の妻アンと長女スザンナ(1583年生)の家族、独身の次女ジュディス(1583年生)。ジュディスと双子の長男ハムネットは、1596年に死亡している。ちなみにシェイクスピアは1564年生まれ、1616年死亡52歳。
こういう人生の大まかな流れや、家族関係などは、イングランド人ならば、当然知っていることなのでしょう。
予備知識がほとんど無い私なんぞは、こういう関係を理解するのに時間ばかりかかった。なんとなく解ったけど。
ここに書いたことは、今朝調べたことも含まれる。
その当時、男尊女卑は激しく、あのシェイクピアの子供であっても女性は、貴族階級以外学校になぞ行かせてもらえず、文盲であった。子供を作れば良いのだ、と。家を護って、継承できれば良いのだと。
そんな環境下で、長男ハムネットには期待もし、勉強もさせて、文字も書けるが、13歳で死亡してしまう。
疫病で死んだことになっているが、実は、自殺?ということ。
偉大な詩人で戯作者シェイクスピアの、期待を一身に受けた長男(唯一の男子)は、大いにプレッシャーに悩むのだ。ハムネットが書いたという素晴らしい詩は、実は、次女ジュディスが口述したものを、ハムネットが筆記していただけ?詩作の能力は、ハムネットには無かった、ジュディスにむしろ有った。ジュディスは字が書けない。
偉大すぎる父を持った、家族の不幸。相続でも、女性に相続権はあるが、結婚すると、その夫が管理権を持つらしい。そこで、婿候補が暗躍する。
こういうことも、イングランド人には、周知のことなのでしょう。それを映画にしたのでしょう。信長や秀吉、家康の生涯を、なんとなく常識的に知っている日本人。
でも、高等遊民としては、シェイクスピアの作品を、できれば原文で読んでみたくなるよねえ。注釈付きならば、読めるかも。