2015年9月19日から12月23日まで、永青文庫で、「春画展」(大英博物館特別出品)が開催された。

前期が9月19日から11月1日まで、後期が11月3日から12月23日までとある。

メモによると、11月26日に出かけていて、後期に出かけていることになる。

 

その時、帰りに、その図録を購入してきた。確か4000円だったかな。和綴じの小冊子を多数重ねた、厚さ6㎝以上の大冊子なので、持ち運びができず、「18歳未満の方の目に触れませんよう本書の取り扱いには十分ご配慮をお願い致します。」との注意書きがあるので、お得意の車内読書もできず、まあ、積ん読状態でした。

が、このコロナ危機で、この際読んで、というか鑑賞してみようか、と。

 

春画というのはどのようなものか。肉筆画もあるし、木版刷りもあって、後者は「浮世絵」の一分野ということかな。

作者も、六大浮世絵師(鈴木春信、鳥居清長、喜多川歌麿、東洲斎写楽、葛飾北斎、歌川広重)のうち、写楽と広重以外は、多数の春画を残しています。

まあ、一言で言えば、芸術作品でしょうね。

取り分け、木版刷りは、絵作者だけではなく、毛の細い一本一本まで彫り出す彫師や、グラデーションなどを出す摺師の、卓越した技法に支えられた、総合芸術です。

それが、春画の分野で、一層花開いている。

 

内容は、様々なエロチック画で、その部分はシンボリックに、かつ微細に書かれている。が、その背景なども、手を抜かずに詳細に描かれている。

 

実は、この春画展に出かけたのは、その直前に発行された「春画入門」(車浮代著、文春新書)をたまたま新聞の書評欄で知って、購入して興味をそそられたから。

この車浮代というヒトも、大した知識ですね。

 

春画中には、詞書(コトバ)が沢山書いてあって、それが「江戸がな」なので、読めないのです。図録には、この現代語訳が載っていないかと期待していたのだけど、残念ながら、ごく一部しか訳文がない。

これがあれば、もっと楽しく鑑賞できただろうに。

「江戸がな」を読めるようになりたいと、強く思います。現在の日本人のほとんどが、江戸かな文字を読めないそうです。

 

以前に、別のブログで、この春画展の感想を書いておいたので、参考までに、以下に貼り付けましょう。

 

”東京は江戸川橋近くの永青文庫で開催されている「春画展」に行ってきました。
春画というと、まあエロ画で、確かにそういう場面のものがほとんどで、18歳未満入場禁止です。
しかし、しかし、すばらしい肉筆画、版画です。
その部分は、完全にデフォルメされて、交合する肉体たちは、物理学的・身体的に「無理」な姿勢です。
また、その背景や、着物の繊細なこと。着物の袖には「透かし」まで入っています。金砂・銀砂まで使用されている高級品もある。
絵巻物にはストーリーもあって、画面構成も念の入ったもの。
これが、数色塗りの版画ですよ。感動しました。
作者も、鈴木春信やら、歌麿やら、有名どころが多い。狩野派まである。
内容も、正統派のものから、変態的なもの、性別を越えたもの、想像・空想を膨らませたものなど様々で、豊かで、開放的な性文化を現すものです。
しかも、伊勢物語や源氏物語をパロディー化したり、本歌取りしたり、当時の高い文化と高度の教養がうかがわれます。
よく知られる浮世絵は、大衆文化で、出版弾圧もなく、庶民が買える価格のもので大量流出していました。
しかし、春画は、大名や、大商人が密かに楽しむもので、弾圧もあり、数が少ない上に、秘匿されてきたようです。それが、明治になって、外国人に買い占められてしまった。欧州では引っ張りだこだったようです。
日本には、このようにすばらしい文化があったのに、流出してしまった上に、日本ではこれまで展覧会など開かれたことがありませんでした。
大英博物館などでの成功を基にして、日本での開催を企画しようとしたものの、著名な博物館・美術館ではびびったのか開催できず、やや小ぶりですが、細川家の永青文庫で、やっと開催できたようです。
12月23日までです。必見だと思います。土日は入場制限の活況。”