ずっと、能楽の公演が中止延期になってしまっていて、これを楽しみたいという希望は大きいし、また、能楽師たちも公演の機会を奪われて、家にこもっている。
そんな中で、大槻能楽堂のYouTubeで、最近、無観客で行った能楽公演を、無料配信している。
半能『三輪』 シテ(三輪明神)大槻文藏 ワキ(玄賓)福王知登
笛:貞光知宣 小鼓:成田喜志 大鼓:山本哲也 太鼓:中田弘美
狂言『柿山伏』 シテ(山伏)善竹隆平 アド(この辺りのもの)善竹隆司
半能『葵上』 シテ(六条御息所の霊)大槻裕一 ワキ(横和の小聖)福王知登
囃子方、同上
お能などの内容や出演者を評論したいのではなくて、この様な企画を思いついて、実行してくれた方々に感謝したい。
幾つかの条件が良いように重なって実現できたと思う。会場が大槻能楽堂という、いわば大槻家の自前の舞台であること(財団法人だけど)、だからこそ当主で人間国宝の大槻文藏師も出演して頂けた、囃子方の小鼓と大鼓が、なにやらTTRというグループを組んでいるらしくここが発起人になったのかな、それに、若手のワキ方も協力したのか。
前に、歌舞伎の通し狂言義経千本桜の限定配信を紹介したけど、こっちは、まったくスポンサーはいないし、音羽屋のような「劇団」もないし、シテ方、ワキ方、囃子方が、全員対等に協力しないと出来ない。
この時期に、良く纏まって実行して頂いた。
能楽は、明治維新、敗戦によって、大きな危機に直面したが、今回のコロナ危機は、それに匹敵する危機でしょう。過去を、自らの努力で乗り越えてきた能楽師たちが、今回も、様々な向き合い方で努力し、乗り越えていくだろうとは信じるが、では、何が出来るかは、実に難しい。
どうやって、お能を維持していくか、技量を蓄えていくか、そもそも生活をどうしていくか。
そんな中で、一つこうした取組もあって良いんじゃないかなと。
高等遊民、謡・仕舞のお稽古ももう丸2ヶ月中断し、今月もダメだろうから3ヶ月中断。素人の関心も腕前も落ちていくだろうし、お月謝収入の上がらない師匠連には、どうしたらよろしいか戸惑うが、なんとか乗りきって、お稽古を復活させたいと願う。
基本的に口伝で伝えられてきた能楽のお稽古は、リモートでは難しかろう。謡だけならば出来るかも知れないが、お仕舞いお稽古は無理だろうな。
コロナ危機後のお稽古のあり方も、模索しつつ、お稽古復活を望みます。
観世能楽堂、宝生能楽堂、喜多能楽堂、矢来能楽堂、梅若能楽学院能楽堂、等など。期間限定でも良いから、無観客能楽公演を配信して頂けないかな。
それは、結局、能楽ファンの裾野を広げることになる。絶対にライブが良いに決まっているから、見所も増える。お稽古したい素人も増える。