2月5日(水) 国立能楽堂

狂言 『鶯』 (和泉流 野村万作家)

   シテ(梅若殿の家来)野村萬斎 アド(鶯の飼い主)野村万作

(休憩)

能 『草薙』 (宝生流)

   シテ(花売男 日本武尊)藤井雅之 シテツレ(花売女 橘姫)髙橋憲正 ワキ(恵心僧都)安田登

   アイ(所の者)内藤連

   笛:寺井義明 小鼓:吉阪一郎 大鼓:内田輝幸 太鼓:徳田宗久 地頭:東川光夫

   面:前シテ「直面」 後シテ「鷹」(元休・作) ツレ(小面)(龍右衛門・作)

 

狂言『鶯』初めて。萬斎と万作でさすが。まず、アド鶯の飼い主が出てきて、手に鶯の入っている大きめな鳥かごを持ってくる。作り物のハズで、鶯も偽物なのだけど、結構リアルにできていて、揺れるからか動いているかのようにも見える。

そこに、どういう訳か、「梅若殿」の家来が登場。梅若って言うのはなんか意味のある姓なのだろうか。その馬鹿家来が、鶯を捕まえようと野原に来て、鳥かごの中の鶯を寄越せという。賭け事になって、刀、太刀も負けて取られてしまい、アドが揚揚と引き上げた後、シテ家来の独白。「初春の、あしたごとには来たれども、逢わでぞ帰る元の住居(すみか)に」という歌が梅若家に伝わっているらしく、それに絡めて、「初春の、太刀も刀も鶯も、刺せず(差せず)に帰る元の住居(すみか)に」と聞こえたけど。そういう換え謡を謡って、引き下がる。鳥刺しと刀を差すに掛けている。

なんとも、万作、萬斎の掛け合いが見事に流れていて、安心して、笑えるし、終われる。

 

能『草薙』は宝生流だけにある曲らしく、勿論初めて。日本書紀だかに取った曲で、それだけ異色。比叡山の恵心僧都(実在らしい)が、熱田神宮に参籠して「最勝王経」というありがたい経を唱える。ここで、仏教の僧が、神社に参って、経を唱えるというコト。そこに出てくる花売りの男女が、実は、日本武尊と橘姫の霊魂だというコト、神仏一体というか、本地垂迹説らしい。

作者は不明だし、話としても、大して面白くない。「最勝王経」というありがたいらしいお経を、僧も、神もたたえるという内容。後シテの舞はまあ見応えがあったけど、後は大したことはなく、正直に、つまらない能ではある。法華経などと違って、大衆には知られていない。まあ、鎌倉の中森さんに言わせれば、どこか、「最勝王経」を主とするお寺から作成を依頼されたか。宣伝。

前シテが直面で、それも珍しい。後シテの「鷹」面も、他ならば、「飛び出」等か。

 

まあ、暇つぶしに出かけたようなお能。宝生流に、現在は名人はいないか。大坪喜久夫さんくらいか。狂言の万作・萬斎は良かった。