1月13日(月・祝) 横浜能楽堂
狂言組 (大蔵流 山本東次郎家)
『麻生』 シテ(麻生の何某)山本東次郎 アド(藤六)山本則重 アド(下六)山本則秀 アド(烏帽子屋)山本修三郎
笛:杉信太郎 小鼓:幸正昭 大鼓:亀井洋佑 太鼓:林雄一郎
(休憩)
『庵梅』 シテ(老尼お寮)山本泰太郎 立衆(女)山本則孝・則重・凜太郎・寺本雅一・山本則孝
囃子方:同上
面:「婦久礼」(ふくれ)(作者不詳)
新春で、舞台の注連縄は取り除かれたが、まだおめでた気分の曲。いずれも囃子方が入って、めでたく、楽しく謡い、舞うというお話。1曲45分と長い。
『麻生』初めて。東次郎さんもあまりやったことがないようだった。舞台上で、烏帽子を被るように髪を結い直すという珍しい演技。鬘で、髪を後ろで束ねたシテが、東次郎さんらしく、早足でちょこちょこと登場。アドの二人が続く。訴訟に勝って、国に帰れる上に、元旦出仕のめでたい席に出ると言うことで、小袖、裃、烏帽子を用意しなくてはならない。気の利いた二人のアドが、命じていないのに用意していて、上機嫌のシテ。
アド藤六が習ってきた髪結いをするが、シテは落ち着きが無い。やっとこさ、結い上がったのに、烏帽子屋に新品の烏帽子を取りに行ったアド下六がなかなか戻ってこない。どうやら、主の宿を忘れてしまった。迎えに来たアド藤六も同じく宿を忘れる。
さて、そこで考えて、囃子をしていけばわかるだろうと。即興で作詞作曲。「信濃国の住人 麻生殿の身内の 藤六と下六が 主の宿を忘れて 囃子をしていく」などと聞こえたが。更に迎えに来た主人シテも、興に乗って同じ囃子をして、謡い、舞う。何で、宿を忘れるか、等と問いただしてもならない。とにかく新春でめでたいのだ。
脇狂言らしい。
東次郎さん、一昨日より元気。
『庵梅』初めて。庵の前に梅の花。実物のようだ。そこに住む老尼の所に、若い女達が「和歌」を作って持っていき、直してくだされと。一人ずつ披露するが、その書いた和歌を梅の木に結ぶ。
次いで、酒になって、一人ずつ酒を勧めて求めに応じて、謡い、舞う。その各人の謡と、舞いが狂言方ではあるが、上手。
新春と、梅。やはりこの組み合わせだよね。
シテ老尼お寮も謡い、舞って、楽しいひとときを過ごす。
シテがつける面は、時代がついたモノで、いたんだ部分もあって、貫禄がある。婦久礼、などという面の名前は聞いたことがない。東次郎家の秘蔵品か。
三老曲の一つで、もっとも奥深い曲。山本泰太郎さんが、しっかりと演じていた。芸が承継されている。他の浪曲は「枕物狂」と「比丘貞」。
初めから囃子方も出てきていて、笑いどころはなくて、お能だな。こういう狂言もアリと。
東次郎さんが、後見でしっかりと。
とても、優雅な、時間を過ごさせて貰った。高等遊民になれるような。
出演していた山本修三郎は、山本家の家系とは関係なさそうな。