11月21日(木) 横浜能楽堂
講演 相原圀彦(江島神社宮司) 「江野島詣」
狂言 『竹生島参』 (和泉流 野村万作家)
シテ(太郎冠者)野村萬斎 アド(主人)深田博治
(休憩)
能 『江野島』 (観世流)
シテ(漁翁 五頭龍王)中森貫太 前シテツレ(漁夫)桑田貴志 後シテツレ(辯才天)永島充
ワキ(勅使)森常好 ワキツレ(従者)舘田善博と則久英志 アイ(鵜ノ鳥ノ精)中村修一
笛:藤田貴寬 小鼓:幸正昭 大鼓:安福光雄 太鼓:林雄一郎 地頭:観世喜正
面:前シテ「笑尉」 後シテ「大飛出」 前ツレ「直面」 後ツレ「増」
とにかく、萬斎が出演すると満席になる。前回の能を知る会横浜公演でも空席が目立ったので、自由席で臨んだが、ややあせったモノの、2階席の最前列中央に自由席があって、最高でした。横浜能楽堂の2階席は、なかなかよろしい。しかも最前列はとりわけよろしい。全席指定席でも、ここを取ると、安いし、よく見えるし。迫力はないけど。
講演が、長くて長くて、つまらなくて、寝てしまった。こういう講演はせいぜいが20分じゃないのか。一時間くらい話していたのじゃないか。後が詰まってしまって、急いで狂言やお能で。宮司とか、全然わかっていないのだ。こういう神社は嫌いだ。
『竹生島参』初めて。ちょうど謡で「竹生島」を習っていたので、興味を持って観ていたけど、単にシテ太郎冠者がアド主人に無断で竹生島に参っていた、と言うだけで、内容は竹生島とは関係ない。
お話は、11月10日の『二千石』と似ていて、勝手に見物に出かけた太郎冠者を成敗せんとするが、様子を聞きたくなって許してしまう。主人は、『二千石』ほど怖くない。あのときの茂山逸平はホントに怖かったが、今回の主人はそんなに怖くない。『二千石』では主人は太刀を持って現れるが、今回は小太刀。それも初めは持っているのが見えず、抜きかけた様子をしたので、オペラグラスでよく見ると小太刀を持っていた。
太郎冠者は、秀句(駄洒落)を適当に話して機嫌を取るが、最後に、くちなわ(蛇)の秀句が思い浮かばず、失敗してしまうというお話。
野村萬斎が、きちんとしていました。姿勢や、発言。もはや、万作の子と言うだけではなく、立派に一家を構えるか。
能『江野島』も初めて。お話は、『竹生島』と似ている。三大辯才天は、竹生島と江野島、厳島。江野島が出現したと聞いて、勅使が京からやってきて、縁起を聞くのが前半。後半は、江野島の二神である辯才天と五頭龍王の舞。こういう構成も、『竹生島』と似ているのではないか。謡を習っていることもあって、詞章は聞き取りやすい。
最初にお宮の作り物が、幕を掛けたまま舞台の大小前に。既に子方が入っている。
ワキとワキツレが登場して、しっかりと、台詞。ワキ方も声が良いよね。時間が押しているか、テンポが速い感じ。
前シテと前シテツレが出てきて、縁起を語るが、やはり中森健之介より父の貫太さんの方が上手。動きも、声の出し方も。
二人とも引っ込んでしまうと、アイが、奇妙な面を着けて登場。小書き「道者」が付くと、参詣人や神職も登場するらしいが、今回は小書き無しで、一人。語って、謡ながら舞う。狂言方も大変だ。このアイの時間だけで、20分くらい。きちんと舞うし、謡う。シテ方の舞とは、型が違うけど。
その間に、後シテツレが、密かに作り物の中に入り込む。初めから入ってはいないんだ。こういうときの後見の動きは面白い。
後シテツレ辯才天が作り物から童子を伴って出てきて、天女の舞。美しい。
そして囃子方のテンポが明らかに変わって、後シテ龍神の登場と、勇壮な舞。大きく、大きく。力強く。威風堂々。
観世九皐会。観世喜正が素晴らしい地頭。ファンになりそう。トップの観世喜之は後見。まだ元気。謡や舞は卒業した方が良いけど。
国土守護というと、何だか、今風では「防衛」の印象があるけど、要するに自然災害から国土と民を守ると言うことなんですね。考えてみれば、「国を守る」とは、政府を守ることではなく、国民の生命と財産を守ると言うことなんだよ。国際法的には自衛権は自衛戦争を意味するけど、ホントは、国民と国土安泰のため。自衛隊は災害出動が本来的任務と言えるのではないか。
9条もこういう文脈で理解すべきか。自衛隊違憲論も乗り越えられる。
高等遊民、ちょっとした政治的発言。