10月26日(土) 横浜能楽堂
狂言組 大藏流
『鍋八撥』
シテ(浅鍋売)山本則孝 アド(羯鼓売)山本則重 アド(目代)山本泰太郎
笛:栗林祐輔
(休憩)
『東西迷』
シテ(住持)山本東次郎
いずれも初見。
『鍋八撥』は、新しく立地された市の先陣争い。間に立つアド目代が決められず、言うまま。互いに技を競い合って決めよ、というだけ。最後は、羯鼓売りが、それこそ格好良く横回転をしながら退場。残った浅鍋売りは、鍋を腹に据えて太鼓の真似をして争っていたが、その横回転を見て困った、上手くできない、で、転がり廻りをしようとしたが、腹に抱えた浅鍋を割ってしまう。「数が多くなって良かった」などというセリフでお仕舞い。あれは、負け惜しみなのか。
浅鍋を、実際に舞台上で割る。腹に巻いたのを、舞台面に押しつけて割るのだが、上手く割れて良かった。則孝さん、腹出ではないので、こういうとき大変ね。
アド羯鼓売り則重さんは、かっこよく、軽業師みたい。考えてみれば、お能より、狂言の方が軽業的動きが多いのかな。狂言方も大変だ。
『東西迷』は”どちはぐれ”と読むらしい。珍しい独り狂言。『独り松茸』も独り狂言だった。山本東次郎の復曲と書いてあるが、実態は、粗筋だけの台本が残っているだけで、ほとんど東次郎さんの作曲。
内容は、古寺の僧が、布施が高く頂ける大法会と毎月の御斎のダブルブッキングで、どっちに行くか、大いに迷うということ。大法会は、名誉だし、布施ももらえて彼方此方直せるし、御斎は常連だし、美味しい斎とゆったりしたお風呂などを毎年用意してくれている。さて、どっち、と。
最後は、結局どちらにも行けずに、どちらにも遅刻してしまい、寂しく古寺に独り戻ってくる。言い訳も独白する。
東次郎さんは、その迷い仕草、帰ってきた時の悔しさというか、言い訳が、しっくりくる。さすが。