10月18日(金) 国立能楽堂
狂言 『萩大名』 (大蔵流 山本東次郎家)
シテ(大名)山本泰太郎 アド(太郎冠者)山本凜太郎 アド(亭主)山本東次郎
(休憩)
能 『咸陽宮』 (宝生流)
シテ(始皇帝)武田孝史 ツレ(花陽夫人)小倉伸二郎 ワキ(荊軻)宝生欣哉 ワキツレ(秦舞陽)御厨誠吾
アイ(官人)若松隆
笛:一噌隆之 小鼓:曽和鼓堂 大鼓:柿原弘和 太鼓:三島元太郎
面:シテは直面、ツレは小面
秋の狂言は、『萩大名』か。9月に2回観ている。大名が野村万作と茂山千三郎。今回は、山本泰太郎。やはり、人間国宝野村万作の大名が一番かな。庭を愛でる時の目つき、身体姿勢が素晴らしかった。泰太郎も、上手だったけど、心に残るモノではなかった。
今回の山本東次郎家は、山本東次郎ー泰太郎ー凜太郎と老・壮・青3代。他の狂言方では、野村万作ー萬斎ー裕基の3世代、野村萬ー万蔵ー万之丞の3世代の3家が、いずれも、老が人間国宝。京都の茂山も世代が上手く続いているようだ。
今回、太郎冠者の凜太郎君が、退場する時、いままでの同曲では、「あの大名には付き合いきれない」ごときの台詞を言っていたが、今回は無言で退場。良いのかな。
『咸陽宮』は初めて。平家物語巻5の「始皇帝最後」を題材にしているらしい。
まず、咸陽宮を表す作り物が登場。舞台上で組み上げる。次いで、シテ、ツレの3人(花陽夫人、侍女)と、ワキツレの3人が(臣下)出てくる。アイの官人もこのときだったかな。
このとき、「真ノ来序」が演奏される。この太鼓が人間国宝三島元太郎なのだ。いい音と、素晴らしい掛け声でうっとりしたが、実は太鼓の出番はここだけ。あれまあ、勿体ない。
ワキが2名出てきて、経過を話して咸陽宮へ。これは、西安の北方にあった秦の首都。凄い城郭なんだ。
ワキが帝に面会して、袖を捉えて殺そうとする、襲撃の戦い。これもたいしたことないね。
花陽夫人の琴を聞かせる場。「琴之段」とか命名されているらしいけど、囃子でも良くわからないし、ここでツレ花陽夫人の舞でもあるだろうと勝手に思っていたけど、この曲は舞が無いのだ。
更に、始皇帝の反撃も、ワキ二人がささと切り戸口から逃げてしまって、斬り殺されるという設定なのに、シテが太刀を何回か振り回すだけ。
で、退場してお仕舞い。
あれれ。もう終わっちゃったの。序破急もない、舞もまったくない。見どころとされるところは、全部、謡で。詞章がわからないと何だかわからないよ。
まあ、軽い曲と言うことなんだろうね。先日の三老女モノ『檜垣』や『姨捨』とはえらい違いだ。重い曲と軽い曲と、これが同じ能って、感じ。『井筒』も舞が美しかったのに。舞が無い能ってあるんだ。
大分、数を見ていると、色々なことがわかって面白いと言えば面白い。これも高等遊民。
実は、この前日、高校時代の同級生の通夜式だった。65歳。ガンだから痩せてしまっていて。気分が落ち込んでしまっていて、却って、この軽い『咸陽宮』は良かったのかも。