7月7日(日) 国立能楽堂

『業平餅』 シテ(在原業平)善竹大二郎 アド(茶屋の亭主)茂山逸平 アド(茶屋の娘)善竹忠亮 他

『止動方角』 シテ(主人)善竹富太郎 シテツレ(太郎冠者)茂山千五郎 アド(伯父)山本則孝 アド(馬)茂山茂

(休憩)

『唐相撲』 シテ(帝王)大藏彌太郎 シテツレ(日本人)山本泰太郎 シテツレ(通辞)茂山忠三郎

       アド(唐子)茂山良輪 他4名 アド(唐人)茂山千五郎、山本則孝、善竹隆司、茂山宗彦、茂山茂、茂山千之丞、山本凜太郎、その他

 

いやあ~、とにかく面白い狂言会だった。最近は狂言寝てしまうのだけど、全然。笑い転げて・・

 

大藏流五家とは、「大藏宗家」「山本東次郎家」「茂山千五郎家」「茂山忠三郎家」「善竹家」のこと。普段は同一曲を共演することはないが、この五家はそれを実現して5回目だそう。4回目は関西で行われたらしい。五家の自主公演で、入場受付やら何やらそれぞれの家族も動員して行っている。

同窓会というか、親戚会みたいな雰囲気だけど、芸はさすがきちっとしている。

大藏宗家も、茂山忠三郎家も、善竹家も見た経験無かった。

 

『業平餅』。初めてだが、有名歌人の在原業平を茶化す。どうして、餅を食べるお金がないのか。その辺おかしいし、茶屋の娘を妻にすることを条件に振る舞われるが、その妻候補が「乙」面を着けて、かずきを被って登場。かずきを取ると、あれ、という寸法で、セクハラ・パワハラが始まる。逃げ出す業平を妻候補が追いかけて、許されませ、許すまいぞ、というお話し。どうしてこういう狂言ができあがるのかしら。笑いの基本がここにある。

セクハラだ、パワハラだと終局にしたら怒るぜ。

 

『止動方角』。前に見た記憶はあるが記録が見当たらない。これも威張り散らす主人を逆に痛めつけるお話し。反逆の笑い。止動方角とは呪文らしい。意味は無いのだろう。どうしてこういう漢字を当てるのか、わからない。

馬を演じる茂山茂が秀逸。ぬいぐるみに、普通は賢徳面らしいが、馬の面を付けていた。新しい趣向だな。7月3日の犬山伏も、賢徳面じゃなく、犬面だった。大藏流茂山千五郎家。

 

『唐相撲』。これは今年の4月に見て2度目。今度は五家なので、出演者も豪勢で、多い。子方(唐子)が可愛い。ちょうど孫と同じような歳の子も居て、爺としてはウルウルしてしまう。

シテの3人は、極めてきちんと演じている。もう中堅を越えている。お家の中心格。大変な重労働だ。ストーリーのほとんどは前回と変わらないので、しっかりした台本的なモノがあるのでしょう。ただ、それぞれの唐人も戦い方が変わるので、それに合わせる日本人相撲取りが大変だ。

終演後に出口に並んで挨拶してくれたが、山本泰太郎さんは、汗びっしょり。さもありなん。

唐人を茶化しすぎるかも知れないけど、純粋に楽しめば良いし、狂言舞台としても完成されているし、演者も手を抜かない。

囃子方も出演して、ファンの大鼓亀井広忠さんも出て、相変わらず格好いいのだけど、あれだけの舞台にいてニコリともしないのだ。プロだなあ。

 

とにかく楽しい狂言会。五家でやることで、それぞれの芸風が良く相乗効果を上げているよう。これは、来年も行かねばならない。