6月29日(土) 横浜能楽堂

狂言 『箕被』 (和泉流 万作の会)

   シテ(夫)野村万作 アド(妻)石田幸雄

(休憩)

能 『隅田川』 (金剛流)

  シテ(梅若丸の母)豊嶋彌左衛門 ワキ(渡し守)福王友登 ワキツレ(旅人)中村宜成 子方(梅若丸)中嶋彩音

  面:曲見(作者:北沢如意)

 

横浜能。昭和28年から初めて67回目だって。私の生年と同じだから、現在65歳だから、67回であっているし、間違いなく営々と66年間続けてきた伝統のある能楽の催し。調べたら、去年の6月2日も行っている。まだ引退前でブログ始める前。砧でした。

 

『箕被』。箕とは、そういえば、穀類を振るって殻などを飛ばす農具でした。これは初見かな。珍しくワワシイ女ではない、従順な妻。

趣味の世界に金を使ってばかりで、家計を顧みない夫に愛想を尽かせて、離縁してくれと威すが、なんと夫は趣味の連歌の頭を選択。この辺身につまされるな。今はほとんどの金と時間を趣味に費やす。もうすぐ死んじゃうんだから良いではないか。

本曲では、出ていく妻を見送る夫の上の句、和泉流では「三日月の(箕被きの)出づるも惜しき名残かな」に、妻が「秋の(飽きの)形見に暮れていく空」と下の句(脇)を付けるのに、感動して仲直りしてしまう、というお話し。

大藏流では、「いまだ見ぬ二十日の宵の三日月(箕被き)は」の上の句に対して「今宵ぞ出づる見(箕)にこそあわれ」と脇。こんなに流派で違うのだね。どうしてかな。

連歌ってのも面白そうだ。

仲直りしてから、酒を飲んだり、歌、謡、舞を披露。この辺さすが万作。きちんと。最後は、こちらへ来たれと妻を誘って退場。ベッドインだな。

 

『隅田川』。前に見たことがあるはずなのだが、記録が見つからない。DVDを2本持っている。観世流(梅若)と喜多流。今回は金剛流で、流派の違いも垣間見えた。金剛流の謡本の字は、読みやすく、続け字など使わず、現代字で読みやすい。それが謡に現れているか、謡もはっきり、しっかりしている。梅若本は、古体字が多く、読みづらく、従って謡も色っぽいか。

ストーリーはご存じモノ。お能鑑賞の変化があって、最初は笛などの囃子方、次いでストーリーに入って、面にも興味が出て、最近は、教室の習い事の好影響で謡い方や舞い方に耳と目が行く。もう少しして、これが融合すると深くなるなあ。

お能は、よろしい。『箕被』じゃあないけど、趣味の世界に没頭しましょうよ、高等遊民。