6月22日(土) 横浜能楽堂

狂言組

『楽阿弥』 シテ(楽阿弥)山本則孝 アド(旅僧)山本則重 アド(所の者)若松隆

       面:楽阿弥(山本東次郎家蔵)

休憩

『花子』 シテ(夫)山本東次郎 アド(太郎冠者)山本凜太郎 アド(妻)山本泰太郎

 

東次郎12番の3回目。今回も折り込んだプログラムが配布される。東次郎さん、力が入っている。今回は、言い訳のような文章配布はない。一般的に配布されるプログラムは、保管が大変だから捨ててしまうのだが、これは捨てられない。「なぜこの曲を選んだのか」の東次郎さんの文章と解説が毎回載っている。これは纏めると、後で出版できるのではないか。舞台の写真なども一緒に編集すれば、記念誌として、また解説本として出版すれば良い。どこかやらないかなあ。檜書店か。

 

『楽阿弥』は、ほとんど能。しかも夢幻能の世界。前日に国立能楽堂で能『梅枝』を観たが、これも夢幻能だったので、理解しやすい。同じような夢幻能仕立ての舞狂言は、3曲あるらしい。『通円』、『祐善』にこの『楽阿弥』らしい。『通円』は去年横浜能楽堂の修羅能シリーズの狂言版で観た。シテは野村万作だった。

この曲は、尺八の芸道に打ち込む話で、尺八を吹き尽くして死んだモノの供養を、僧とともにする。謡と舞と。狂言方でもきちんとできるのだが、やはり、シテ方とは少し違う謡い方と舞の型。狂言のシテ面も。地謡が気持ちよさそうに、大きな声で謡っていた。うらやましい。

 

『花子』は、浮気な夫と、ワワシイ妻のお話で、間に挟まって太郎冠者。花子(はなご、と読むらしい)は、田舎人には珍しく気立ても良く教養もある女。どうやって、ワワシイ妻を騙して逢い引きの時間を作るかの攻防が前半。掛け合いが面白い。これは、笑える。上手く首尾ができて、ちょこちょこと退場する東次郎さん(夫)。

身代わりで持仏堂で座禅被ぎを被る太郎冠者を見破ってしまう妻。ちゃんと花子に逢いに行くと言えば一晩くらい許すのに、の台詞に、思わず『ウソ』と声を出す。大笑い。

後半は、逢い引きを終えて、片袖を脱いだ衣装(素袍)で、夢見様で再登場すると、太郎冠者から座禅被ぎを被った妻にのろけ話。この様子が可愛らしくも悲しくもある。男はみんな単純なのさ。座禅被ぎを取って、姿を現す妻に、打ち据えられる。ワワシイ女は、もう。許されませ、許されませ、と退場。謡や舞が組み込まれた狂言らしい狂言。

東次郎さんがやりたかったのだね。

 

次回は、船弁慶のアイ狂言を東次郎さんが。しかもシテは梅若紀彰師匠。楽しみだな。