5月25日(土) 横浜能楽堂
狂言組
『抜殻』 シテ(太郎冠者)山本則秀 アド(主)山本則重
(休憩)
『花盗人』 シテ(三位)山本東次郎 アド(何某)山本泰太郎 立衆(花見の衆)山本則孝、則重、凜太郎、他2名
今回は、2回目で、東次郎さんから観客へお手紙。趣旨は、80歳を超え後どれくらい舞台を勤められるか不明、とうじろうに引っかけて12番のお話しをいただき他家に申し訳ないが引き受けた。家伝というが秘伝ではない。体力気力限界ぎりぎりの所もう一度だけやっておきたい曲、好きな曲のこと。そして、甥たちに習いの曲を初役で、と。齢80を越えてなおかくしゃくとしつつも、不安が迫り、かつ後進のために、という切々なる12番もの。良くわかりました。東次郎さんの集大成ですね。12番(24曲)すべて楽しませて記憶にとどめさせていただきます。
『抜殻』は、2018年11月の狂言堂で、和泉流、太郎冠者小笠原匡、主人野村万蔵で観ている。今回は、35分近い舞台で、使いに行く前に、主ねだって太郎冠者が飲ませて貰って酔っ払い、眠ってしまうまでが長かったような。前回は、道で寝た太郎冠者に主が怒って鬼の面をかぶせてしまう懲らしめ版だった。面は、「武悪」、これは同じ。
ちょっと、眠ってしまった。
『花盗人』は初めて。やはり東次郎さんの熱演。花を盗んでしまった三位(出家で位の高い人)が、もう一度ぬ見に来るが捕まってしまう、諦めるも、なんとか言い訳をして、花の主何某と一行と仲良くなって酒を飲み、歌を歌い、舞を舞って、でも最後に大きな枝も持って行ってしまうお話し。
曲中に、和歌もたくさん登場する。
「観てのみや人に語らん山桜手ごとに折りて家づとにせん」
「折りつれば髻に汚る立てながら三世の仏に花奉る」
「この春は花のもとに縄つきぬ(名は尽きぬ)烏帽子桜と人や見るらん」
その他、古歌も漢詩も出てくるが、わからない。昔の教養人はわかるのだろう。このお話でも、三位と何某は話が通じて、酒盛りとなり、その中で、謡を謡え、だの、舞を舞えだの、楽しく盛り上がる。そして、三位が大きな枝も盗み出して逃げると、何某他参加一同やるまいぞ、やるまいぞ。
曲中の、和歌、古歌、漢詩が理解できれば、楽しさ倍増するのだけど。
さすがの東次郎さん。見逃すまいぞ、見逃すまいぞ。後10ヶ月、10回。