5月24日(金) 川崎大師平間寺特設舞台

薪能法楽

仕舞 『巻絹』キリ  鵜澤久

    『松風』    観世恭秀

    『山姥』キリ 観世芳伸

(火入れ)

狂言 『墨塗』 和泉流

        シテ(大名)三宅右近 アド(太郎冠者)三宅右矩 アド(女)三宅近成

舞囃子 『藤戸』 観世清和 囃子方

(休憩)

能 『賀茂』 観世流

        シテ(前:里女 後:別雷神) シテツレ(前:里女)井上裕之真 シテツレ(後:関根祥丸) ワキ(室明神ノ神職)森常好

        アイ(末社ノ神)前田晃一

  面の紹介無し。多分、前シテとツレは小面。後シテは大飛出。アイも面を着けたが何だかわからない(狂言面は違う。)

 

薪能なるモノを初めて体験しようと。以前流行って、あちこちで薪能が行われた。今回、川崎能楽堂のページで発見して、申し込んだ。S席は、雨天の場合、信徒会館で観られて、A席は払い戻しと言うことだったので、最近は安い席を取るのだけれども、S席6000円を取る。

 

区分内自由席なので、どうせなら良い席を取ろうと4時半開場の前4時には行こうと思っていて、実際には3時前に会場前に到着したが、既に数人が並べられた椅子に座って待っている。あれまあ、だが、数人ならばいいやと、くず餅カフェして、お参りもして、4時前に並び始めたが、その時は10数名先着。まあ良いでしょう。

 

主催が川崎大師薪能実行委員会で、観光協会も共催しており、地元の自民党元国会議員(今でもボスか、大御所か)が実行委員長なのか、開催前に挨拶が続く。川崎市の副市長も来たりして。別に能が好きだというわけでもないのに、元地元有力者に言われたからか、出てきて、良い席に「関係者席」が作られていて、きっとタダなんだろう、招待席も結構ある。ちょっと、能の愛好家ではないんだ、と残念。仕舞や能楽の終わりの拍手。まだ、退場しかかっていないのに拍手するのは、自分としては雰囲気殺しだと思う。クラシックで、曲が終わったばかりで拍手する馬鹿者と同じだと思うが。まあ、能楽の普及のためだから。

 

仕舞3曲。やはり、2回仕舞を習っただけで、まだまだ超初心者なのに、あ、あの型だ、なんぞと思って、少しは良さがわかってきた。まあ、お爺ちゃん達、格好いいね。

 

狂言『墨入』。2回目かな。本ブログに記載がないから、それ以前。狂言堂かなんかで観たんでしょう。嘘泣きの女の話。ひたすら面白い。落語にも嘘泣き女の話があった。あれは、目の下に茶柱が付くというモノ。こちらは太郎冠者が、女の目の下に付ける水を墨に帰るというモノ。

 

舞囃子『藤戸』。仕舞に囃子方も加わるというモノ。これはなかなか勇壮でよろしい。舞手は観世宗家。今度天皇の前で能を披露すると、最初に挨拶でボスが話しておったが、この会はそういう権威というか、見栄というか、実行委員会の自慢というか、そういう会なんだ。

杖を持って舞うが、持ち物の舞は、先日船弁慶を観た。事前解説で刀を振るう場面もあると聞いたので、杖を右手で、上からつかむ所作があったが、そうとわかった。これも仕舞お稽古の関係。腰に差したお扇子を引き出すとき、上から出すのではなくて下から出すと。それは刀の握りからだと。ああ、思い出した。以前東次郎さんのお話を聞いていたときに、刀を右手に持ち替える所作をすると戦闘意欲がないことを示すらしい。刀は、必ず左に差して、右手で上から握って鞘抜きをする。

 

能『賀茂』。この頃から夕闇になってきて、薪能の雰囲気が高まる。

薪能は、かつての、野外で、光源も少ない時代の雰囲気が残るモノ。火入れ後の補給をするのに控えている烏帽子・白水干の方が、うろちょろするのが目障りだったが、良い雰囲気。薪能悪くない。光源が少ないから、面の陰影がよく表されて、2人の里女がゆっくり登場するときは、本当に幽玄で、ゾッとする。美しい。

手元が暗くて、詞章訳は読めなかったが、ちょうど一週間前に、国立能楽堂で(宝生流で)観ていたので、ストーリーもコトバもまあ理解できて、良かった。前回との違いの最大は、小書き無しで、アイが舞うというモノ。これが通常という分けか。今回は、詞章やストーリーではなく、薪能という雰囲気、光源の中の主として面を楽しむモノなのだ。やや下からの薪、舞台後方上部にある高張り提灯、スポットライトもあるが、普通の能楽堂とはまったく違う。面の表現が多彩。あんなに、光と影で違うんだ。うつむくか、上を見るかで面の表現は変わるが、それが更に強調された上、陰影が色濃く印象に残る。また橋掛かりの奥のお幕辺りはさすがに薄暗いので、そこから登場する里女や、天女、別雷神の登場の時の風景、退場時の風景も見どころ。感じ所。

また、仕舞のお稽古によって、後半の天女の舞、別雷神の舞も、十分に楽しめた。もっともっとお稽古が進むと、どんなに楽しくなるのだろうか。

 

高等遊民。能にハマったか。