5月17日(金) 国立能楽堂

狂言 『文荷』 シテ(太郎冠者)山本則俊 アド(主)山本則孝 アド(次郎冠者)山本東次郎

能 『加茂』 宝生流

     シテ(前:女 後:別雷神)朝倉俊樹 シテツレ(前:女)水上優 シテツレ(後:御祖の神)和久莊太郞 ワキ(室明神の神職)森常好

     間狂言 『御田』 オモアイ(加茂明神の神職)山本則秀

     面:前シテ「泣増」 後シテ「大飛出」 前ツレ「小面」 後ツレ「小面」

 

狂言とアイは山本東次郎家。『文荷』は2月の狂言堂で観ている。その時は野村万作の会だった。その時は、シテが高野和憲、アド主が岡聡史、アド次郎冠者が野村凜太郎。今回は、山本東次郎が次郎冠者。何という豪華な。

でも今回は15分で、なんか端折った感じ。大筋のストーリーは合っているが、前回は、男色を冠者が笑い飛ばし、もっと主の文をけなす。そこに面白みがあったのに、今回は、あっという間に終わって、男色的なのは、文の宛先が男(左近三郎)だとわかるくらいで、貶すシーンはないし、大笑いできなかった。後で能の時にわかるのだが、今回は、能の間狂言が大変で、山本東次郎家は、その間狂言で一杯一杯だったのだ。

 

『加茂』宝生流。シテ方の名前はまったくわからない。ワキはご存じ森常好さん。ワキとワキツレ(従者)が出てきていつもの道行き。それから前シテの女が二人出てくる。どっちがシテか、シテツレかわからないが、二人が、美しい装束と面を着けて、じっくりと橋掛かりを出てくると、その美しいこと。ちょっとだけ舞を習って、カマエとかハコビを実際にやってみたら、難しいから、ちゃんとできるシテ方は大したもんだと。もはやここで感心しきりで、能って素晴らしいなあ。前場の語り合いも、良かった。詞章と訳、液晶画面も見ながら、シテ方の足の運びや、動きなどを見ていると、忙しいやら感心するやら。ちょっとお勉強しただけで、あれも観たいこれも観たいで、能の世界が広がって、楽しみが数倍増。

 

今回は、アイが、特別仕立て(替間=カエアイ)の狂言『恩田』。神職に、7人の早乙女、狂言後見に東次郎さんともう一人。山本東次郎家総出演。足りたのかなあ。オモアイは、謡をしながら、結構激しく舞う。シテ方の舞の時の謡は、大体地謡がやるのに、間狂言は自分で謡って舞う。これは大変だよ。声がかすれちゃって、それはマズイと言えばマズイが、狂言方もこういうアイができるんだと。こういう謡と舞ができるんだと。シテ方の附属ではないんだと。東次郎さんは、狂言後見に出ていたが、こういうことをやりたいのか。若いモンは鍛えられる。

この間狂言は、御代の代替わりで、田植えやらなんやら。何か、大嘗祭の前受けか。その中でも、早乙女と神職の掛け合いで笑いを取る。

後場は、シテツレ天女御祖の神の舞。これが美しい。天女の舞とか命名されている。舞にこんなに心を奪われることはなかった。お稽古の成果かも。そして、後シテ別雷神の勇壮かつ冷厳な舞働き。登場からして、凄い。

で、序破急で、パッと終わる。余韻たっぷり。ウルウル。

能って良いなあ。ハマってしまったなあ。まだ1回だけどお稽古して、楽しみというかが広がったし、奥深さもわかって。

やっと高等遊民らしくなってきたか。

実は、来週も『賀茂』を観る。今度は観世流。どんなになるかなあ。楽しみだ。