4月14日(日) 横浜能楽堂
狂言組(大蔵流 茂山千五郎家)
お話し 茂山千之丞
『左近三郎』 シテ(狩人)茂山あきら アド(出家)茂山茂
休憩
『察化』 シテ(太郎冠者)茂山千之丞 アド(主)茂山茂 アド(すっぱ)松本薫
今回の狂言は、茂山千之丞のお話しでスタート。あれ、と思ったら、千之丞さんは襲名してすぐらしい。前名は童子、先代千之丞の孫、あきらの子供。あきらが千之丞を継ぎたくないと言ったから、という内輪話。先代の2世千之丞は、千作の弟で、その系統は、七五三、孫に宗彦、逸平となる。お話しの中で、忠三郎家とはやり方が違うとか、色々話していたが、忠三郎家との家系図的関係はわからない。
こういう、流儀だけではなく、お家の風がわかると更に楽しくなる。どうも、千作家は、とにかく面白い狂言ということらしく、正しく伝統を継承するよりは面白く、らしい。大蔵流の家元の大蔵家は、さすがに伝統を継承するらしい。今度、映画『よあけの焚き火』を見る予定だけど、これは大蔵流宗家の厳しい伝承のお話しらしい。
なかなか、高等遊民も深まってくる。
『左近三郎』。さこのさむろう、と読むらしい。読み方も流儀、お家で違うらしいけど。話しは、狩人と出家が出会って、狩人が出家をからかう、最後は意気投合して去る、という単純話。狩人が弓を携えて登場するし、出家に酒を飲むかとか、妻を持つかとか聞き出すときに弓に矢をたがえて放とうとする仕草をする。本気じゃないけど。確か、狂言で弓が登場するのは2~3曲しかなく、これはその1曲で、靭猿がもう1曲。靭猿は、結構真剣に弓矢を放とうとして脅す。4月2日にござる座で萬斎で観た。あのときの萬斎は怖い顔だけど、今日の茂山あきらはご愛敬程度の顔つき。
『察化』。これも名前で、みごいの察化というらしい。みごいの意味が解らないが、要するにすっぱ。この話も、都におじさんを探しに行けと命じられた太郎冠者が、知らずにすっぱを連れて来るが、主はなんとか接待して帰そうとする、しかし太郎冠者は失敗ばかり、主がマネをしろと言うが、真面目な、アホな太郎冠者は余計なことまで主の真似して、最後はすっぱが「迷惑なこと」と逃げ出す。
ひたすら面白い狂言で、動作も面白いのだけど、近くの男性観客が、驚くほど大声で笑うので、そっちの方がびっくり。吉本歌劇でもあんなに大声で笑わないだろうという感じ。どうしてあんなに笑えるのだろうか、空気を読めずに笑えるのだろうか。茂山家が京都なのと関係してくるのだろうか。3回券で購入しているが、後2回近い席かと思うとやや気が引ける。
4月27日の唐相撲という「史上空前の狂言」も茂山千作家が千之丞家と合同でやるのではないか。楽しみ。
終了後、5月から始まる初めての謡・仕舞教室に使用する梅若の教本「土蜘」を、頼んで早めに受け取ってきた。その担当係の人が、今まで何回か顔を合わせて、挨拶などもしていた方で、受け取りの身分証明が必要のはずが、顔見知りなのでOKとなった。高等遊民、横浜能楽堂では知られる人になったか・・・。お互いの初めて名前がわかる。これからも何回もお会いすることになる。