【八咫鏡】

八咫鏡（やたのかがみ）は、皇室に伝わる三種の神器のうちの一つです。

八咫鏡は伊勢神宮にある御神体と、その御神体をかたどって作ったという皇居の賢所にある形代の2つがあります。

神道の祭壇は、鏡がご神体であることが多く、礼拝する人自身の中に、神様を見つけようとしています。ご神体の鏡は、自分自身を見るのではなく、自分の中にある神様を見ようとするのですね。

例えば森に囲まれた伊勢神宮のなかや、五十鈴の流れの近くに身を置くとなぜか、自然にすっとした気持ちになりますよね。

また、例えば海でくり返される波の音にじっと耳をすませているだけでも同じように頭が空っぽになってすっとした気持ちになれます。いつのまにか自分の中の何かがリセットされているような気持ちになります。

これは一説によると、そのような自然には、特定の高周波にあふれていて、人間は、無意識のうちにその周波数に意識が向くと言われています。その高周波とは自然の気配のことだと思います。

自然の気配から神様の存在、完全調和の世界を感じ取る感性が大切だと思います。かつて鳥羽上皇に仕えた西行も、伊勢神宮を訪れた際に次のような歌を詠んでいることはご存知かと思います。

「なにごとのおはしますかは知らねどもかたじけなさに涙こぼるる」

神様の気配を感じた瞬間に、涙があふれ、感謝の心が自然に湧き起こってくるのでしょう。これは人間の妄想や人間が作り出した願望による虚像の産物ではなく、人間本来に宿っている神性だと思います。

人間という存在は宇宙の一部です。宇宙を神様と呼ぶならば、人間はその一部です。

三種の神器のうちの一つが八咫鏡で、自分の中にある神性を思い起こそうとするということに日本の國體の奥深さを感じます。