「せんせ、ありがと」

「さよなら、またね」



それが最後の言葉でした


50代の

消化器がんの女性



ご両親も他界され

夫も数年前に見送り



あとは自分の店じまいよ、と


話されていた





手術、最初、転移

抗がん剤

すべての治療を行った




「なんでわたしにはこんな試練ばかり」


「死んじゃいたい」


「はやく両親のとこに、旦那さんのとこに

いきたい」



いくどもいくどもそう話しながら


治療をしたくない気持ちと


病気が悪化する恐怖


死への畏れ


生への未練


生きている間葛藤した



もちろん

体調のことや

就労との兼ね合いなどのこと以外には


わたしは直接は

関われなかったけれど


いや、むしろ

彼女が自分で片付けていくのを

見守るだけだったけど


泣きながら

笑いながら

怒りながら

人生の店じまい




何度思い返しても

ひとりでしまっていった




最期のときは?

どうするの?



「疎遠だけど、兄にたのんだわ」

「両親のときにもめてね」


「でも、勇気をだして頼んだの」


「やっぱり自分からいわないとね」



兄と久しぶりに会って

和解もできたのよ、と



穏やかに話した

心から安堵した表情





そして

静かに

旅立った




「さよなら、またね」



またね、だね



自分で自分の命の期限と

向き合うのは容易ではない



できそうでできない

人生の店じまいと旅支度




緩和ケアってことば


ひろめるには


むしろ

患者さん

家族

介護士さん

看護師さんの


ちからが絶大です



患者会

いつでも