「意識がもどらないのは
緩和ケアで何もしてくれないからだ」
「高カロリーの点滴をして
栄養をつけてください」
「栄養もあたえてもらえないから
意識がよくない」
「なにもせずにみてるだけで
よくなるはずがありません」


膵臓がんの患者さんの夫
切々とうったえる


たくさんの治療を
無理がある治療も
がんと闘う治療を
必死に調べて

夫婦でやってきた


「あと10年は生きるつもりでした」
「緩和にきて希望がなくなって
それで意識がわるいんだと思います」



あと数日で
命を終えようとしている患者さん
電解質も乱れ
それらを治すすべは
残念ながらもうない


なぜ意識をと思うのか
伺うと

「今まで感謝もいえていない」
「いま何をかんがえているか
はなしてほしい」
「会話ができるようにしてほしい」






怒りと悲しみのこもった
その視線





点滴がいまの状態を改善しないこと
かえって腹水、胸水、浮腫の増悪にしか
ならないこと
意識の回復は難しいこと
ご本人からしたら、うとうとと
自然の眠りでつらさをやわらげていること


丁寧にお伝えした



が、



「かんわだとやってもらえないのですね」
「かわいそうに」



なにかむなしい

なにもしていない

なにもしてもらえていない


なにも


なにも



なにもしてくれない




クラクラする



ならば
中カロリーの点滴を
数日投与し評価する


そうお伝えして
部屋をでた


部屋をでる間際に

聞こえた


「やっとだ」
「ようやくなにかしてもらえる」



緩和ケア病棟で

なにもしてくれない


家族の思うように
してくれない

なのか



ならば緩和ケア病棟に
医師はいらない

家族がすきなように
判断すれば良い


死を遠ざけずに
死はだれにも訪れるのだから

普段から
話していれば
こういう後悔は減る



なにもしてくれない







抗がん剤について
調べるように
緩和ケアについても
調べたら
色々
知ることはできるのになぁ

わざわざ緩和ケア病棟を
選ばなくてもよかったのに、ね