「今は食べられないから
抗がん剤はできないといわれました」

「きっと食べられるように
なりますよね」

「手術したら
食べられるようになるって
きいて、頑張ったのですが」

「なかなか食べられるようにならなくて」

「そうしたら今度は
食べられるようになったら
抗がん剤を、と」


「胃がんの手術する前より食べられない」
「よくなるのでしょうか?」


妻も不安気である

「主治医の先生も色々考えて
くれるのもわかるけど」

「いつになってもなんだか
食べられるようにならないので
心配です」

「そのうち、そのうちって
言われるの」


医師は
病をよくするように
治るように
考えるよう教育をうけている

食べられないきもちに
寄り添うことが
患者さんにとっても
家族にとっても
大事なのだけど

なかなか
そこには
思いがいたらないのかも
医師の弱点


なぜこの方針を選択し
その次の治療方針の見通しをたて
希望だけでなく
現実に即した方針を
一緒に考える


ある程度の予測のもとに
治療をすすめる


医療者は現実から
目をそらさず

患者さんや家族はそらしてもいいから

しっかり
向き合っていけるように
チームを組んで
支えていく


患者さんは
ステロイドと鎮痛薬で
少し食べられるように
なった


栄養補助食品も摂取できるようになり

少し体重も増えた

笑顔も増えた

食べられるいまの時間を
大事にしたいと
化学療法は行わないことを
患者さんが選択した

少しずつ食べながら
穏やかに過ごす

「嬉しいです」
と話す笑顔にわたしもほころぶ 



ある程度の予測を
適切な見通しを
伝えることも
患者さんの生活をささえることに

なるんだとおもう

いたずらな“大丈夫”は
大事な時間を
奪っちゃうかもしれない


わたしは
患者さんの現状と
希望とを
すりあわせ

患者さんの希望にそえる支援を
考える


最終決めるのは
患者さんなんだけど

一緒に考える
おせっかいな医者が
いてもいいよね〜



なでてー

ジロウはおじいさん

いまのとこ
精そう腫瘍も
変わりない

でも少し落ち着きなく動くことが
増えたような?