乳がんの治療を行っている患者さん

ご夫婦二人暮らしで

娘さんが二人

一人は近所、一人は遠方にくらしている

 

基本的には近所にすむ長女さんが生活の

支援をおこなっていた

 

骨転移のために痛みが出現し

利き手に麻痺が生じた

 

放射線治療やお薬の調整で

痛みは治まってきたけれど

不全麻痺がのこった

 

骨転移はその生じた場所によって

例えば神経の通り道に近い場所に

できたときなんかは痛みが

生じやすいし、神経そのものに

影響をおよぼして

麻痺やしびれを生じる

 

でも骨転移に対しては

放射線治療も良く効くし

希望はあるのだけれど

 

 

やっぱり麻痺が生じると

命の長さより

生活に支障が大きくでてしまう

 

生活が今までのようにできなくなる

 

”娘さんでよかったわね、手伝って

くれるでしょう?”

“困っているなら社会資源を使えばいい”

 

長女さんは仕事も家庭もある

 

近所とはいえ24時間

つきっきりというわけにはいかない

 

 

疲労は、家族だからがまんできるという

ものではない

 

放射線治療の通院は毎日で

近くに住んでいるもののつとめとして

毎日の送迎を担当されたのだが

それも時間のやりくりは

大変だっただろうと思う

 

 

ある日の外来

お母さんがトイレに行っている間に

”ちょっとだけいいですか?”

ぽろぽろと涙を流しながら

震える声で

 

「妹がにくたらしくて」

「ときどき母と電話で話すだけで

介護しているような気分になっているみたいだけど」

「もうわたし限界です・・・」

「母も少し前とは違うし・・・」

「でも妹は電話ではなすだけだから

わかってくれない」

「”べつにお母さんかわらないよ”

”お姉ちゃんがぼけたって思ってるだけでしょ?”

とか言われるともう腹がたって」

「でもけんかしている姿を

母にはみせたくないから」

 

お母さんがトイレから戻ってきたようだったが

受付の方が察してくださり

お母さんとお話をしてくださっている

すごい!さすがでしょ!

 

「でも、もう限界」

「母のこともイライラしてくるし」

「私、親不孝だし、優しくないですよね」

 

うわ〜ん、と泣き出す

いっぱいいっぱいだったんだ

 

妹さんはきっと

便りになるお姉さんがいるから

まかせて安心!と思っているのだろうな

 

お姉さんもきっと

責任感も強い方だから

迷惑をかけちゃいけないって

思っているのだろうな

 

 

これからの生活のことを考えると

社会資源の導入は検討したほうがいいこと

せめて薬の管理とか医療面だけでも

訪問看護の介入などで

娘さんの負担がへらせるかもしれないこと

食事は配食サービスなどをたのむことも一案

 

色々話し合った

 

「母がいやがるかも。人を家にいれるなんて」

 

そうね、確かに。いやがる方も多い

でも、娘さんが倒れるよりはいい、って

考えてくださるかも

 

「・・・そうですね。少し力が入りすぎていたかな」

「いちどみんなで話し合ってみます」

「そうですよね、妹も心配してますよね」

 

 

家族がすべて背負うこと

これがもう難しくなっている社会なのに

 

それでも

家族だから、娘だから、嫁だからなどの

社会的な圧迫って緩やかにじわじわと

責める

 

 

そして

近くに住むものはさらにその責任が重く

のしかかる

もちろん遠くにすむものも

気にしているし

心配しているし

なにもできなくてわるいな、なんて

思っていたりするのだろうけど

 

例えば

夜中に緊急の電話がかかるかもって思っていても

実際に走って行かなければいけない家族は

遠方にすむものより

電話を気にするだろうし

 

何かあったらはしっていかないと、って

思う気持ちは近くのものには

つねにあって

大なり小なりの不安をかかえている

 

このストレスが長く続くと

やっぱり心に変調を来す

 

 

それはだれも望んでいないことだ

 

 

 

だからといって

家族の関係性は様々で

医療者が立ち入ることではない部分でも

ある

 

 

だから家族ケア

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犬は犬でしか

通じないこともあるのかな?

 

家族って

本当に大変