家族は第2の患者

 

時に患者さん以上に苦しんでいる

 

 

「自分のことなら頑張ればいいけれど」

「どんなにがんばっても

がんばりきれない」

 

「どうしてあげればいいかわからない」

 

「何をしてあげればいいのかわからない」

 

 

 

よく聞く言葉です

 

何をすればいいのだろう

 

家族や親しい人は

いったい患者さんのために

何をしてあげればいいのだろう?

 

 

きっと答はありません

 

何をしてもいいし、

何もしなくてもいい

 

とにかく

そこにいること

体調をくずさず

そこにいることが大事なんだと

思うのです

 

 

物理的な支援

目に見えることばかけ

 

もちろんそれも大事だし

あるにこしたことはない

 

でも

 

なにもしなくてもいいから

いる

 

そばにいなくたっていいから

いる

 

その存在

それがすべてだよなあ、と

思う

 

 

乳がんの患者さん

50代で

娘さんがそれぞれ県外に嫁いだ

ばかりだった

 

娘さんは少し無理をして

お見舞いにきてくれる

(*コロナの前のお話)

 

笑顔であかるく、朗らかな

娘さん達

 

週末は時間をあわせて

面会にこられていた

 

 

が、

あるとき患者さんが

娘さんに伝えた

 

「むりしちゃだめ」

「あなたたちが、嫁いで、家をでて

寂しくなったけど」

「それでももう安心だ、って思ったのよ」

「無理をして欲しくないの」

「おかあさんのせいであなたたちが

倒れたらおかあさんが悲しい」

「だから、無理はしなくていい」

「話せる間は、電話でいいでしょ?」

 

 

「声はきかせてほしいけど、

それも週に1回くらいでいいわ」

 

 

「あのね・・・」

「あなたたちがいてくれるだけで、

そばにいなくても、十分うれしいの」

 

 

「おねがい。無理をしないで」

「いつか倒れてしまったら

お母さん、死ぬにしねない」

 

 

「最期、息を引き取ったら、

その時は病院にきてね」

 

「もう十分やってもらったから

それでいいのよ」

 

 

 

「ありがとね」

 

 

娘さん達は突然のことで

目をまんまるくして

ことばを失った

 

お二人とも目元が赤い

 

でも必死で涙をながさないように

しているのがつたわり

 

おばさん(←私)は泣きそうになる

 

 

「ほらほら、泣かないの」

 

「あなたの家庭を大事にしなさい」

「あなたの新しい家族を大事にしなさい」

 

それが私の願いよ・・・

 

もう少し生きたかったわねえ

 

十分なんだけどねえ・・・

 

 

と患者さんも目元が赤くなっている・・・

 

 

 

 

患者さんを支えるというのは

 

なにも側にいて

目にみえることをすることばかりではない

 

家庭の事情

その人を取り巻く環境

それは様々だ

 

無理をしないで、といわれても

無理をするしかない

 

けれども

あなたが体を壊したら

患者さんが悲しむよ

 

 

そして

 

さらにその家族をとりかこむ

まわりの人へ

 

「患者さんが一番大変なんだから」

「あなたもがんばらなきゃね」

 

こういう言葉はときどき

家族にとって負担になる

 

 

わかってるよ〜

十分がんばってるよ〜

 

って

ただでさえガラスのような心に

ひびが入るの・・・

 

 

よくやってるね

なにか手伝えることがあったら言ってね

 

そういう言葉かけ

嬉しいかも

 

image

休めるときはやすんでね

 

家族はいっぱいいっぱいだよね

だから

そっとみまもろう

 

そして

家族もね

無理はしちゃだめ

 

身体をこわしたら

患者さんがいちばん

かなしむよ

 

患者さんのことを家族が心配するように

患者さんも家族のことを心配してるんだから

 

自分の生活を

維持していくことも

家族のつとめなのかもしれないね