家族は元気で生きていて欲しいと願う

 

自分だってげんきだったら

ずっとみんなと一緒にいたい

 

家族は食べて食べて

ほら動いて動いて、と

励ます

 

患者さんだって

頑張りたい

けれど

だんだんにかなわなくなる

 

 

家族もわかってる

でも動かないと

たべられなくなっちゃう

動けなくなっちゃう

だから頑張れって応援する

 

ふと今日思い出した

 

食べて食べてって食べさせていたら

誤嚥性肺炎になって

抗生剤の治療も効果なく

旅立ってしまった患者さんのことを

家族は悲しみにくれた

「こんなはずじゃなかった

わかっていたら無理にはたべさせなかったのに」

 

人を支えるって

本当に難しい

家族だからこそ難しいときもある

 

家族が本人を思うがあまり

苦しめちゃうことも

あるんだってこと

 

 

大切なのは

本人の気持ちなんだ

 

家族が抗がん剤治療を切望して

だんだん副作用がきつくなって

 

そんなとき

男性の患者さんが

病室でつぶやいた

 

ぜったいに誰にも言わないでくれる?

と前置きして

 

 

「はやくお呼びがかからないかな・・・」

「これが(胸腔ドレナージ)、死に神に

みえてきてね」

「でもなんかいやな気持ちじゃないんだな」

「連れて行ってくれよ、って思うの」

 

 

「家族はこんな姿をみても食べろ食べろって」

「もう食べられない、というか食べたくない」

 

あらら

熱心なご家族で、いくつもタッパーをもってきて

たべられるものを探している

 

「あれ、やめるように先生からいってくれないかな?」

 

食事のこと?

 

「そう」

「もうみるのもいやなんだけど

家族の顔をみると言えない。わるいもん」

 

こんどみんなで話しようか?

 

「そうだなあ。でも・・」

「一番いいのはボクが

す〜ってきえちゃうことだな」

「先生、死に神の知り合いいないの?」

 

さすがに、まだ、そこまで修行できなくて・・・

 

「修行いるのか!そりゃたいへん」

 

「はやくお呼びがかからないかな」

「よく亡くなった人がみえると

お呼びがかかるっていうじゃない?」

「お袋が最近夢にでてくるから

もうすぐだろうとは思うんだけど」

「その話を家族にしたら、

いやだあ、縁起悪いってさ」

 

 

「こんな姿でいきているの

つらいんだなあ・・・」

 

 

「やりたいことはたくさんあるのに

何一つできない」

 

「一日二日寿命が縮まったっていいから

この機械もとっぱらって、家に帰りたい」

 

 

家族って難しい

 

患者さんのことよくわかっているようで

わからないこともある

 

そもそも意思って

いつも一定じゃない

 

家族の意思も

患者さんの意思も

 

ゆらゆらとゆれる、不確実なモノ

 

 

私も父に

食べろ食べろ、と言ったなあ

 

いやだったんだろうな、と胸の奥がチクチクした

 

 

 

生きたい

生きていたくない

でも生きたい

 

 

生きてほしい

つらいまま生きるのは・・

でも生きていてほしい

 

 

ゆらゆらとゆれる

その気持ちを

ふんわりと医療者はつつみ

 

そのなかでの最善を判断する

 

患者さんや家族の判断を

そのせいにするのではなく

しかと受け止め、支える

 

 

難しいことだけど

たくさんたくさん話し合って

対立して

考えて

お互いが歩み寄ることで

溝は浅くなる

 

残された時間をどれだけ有意義に生きるか

患者さんの希望に沿うか

 

その時はわからないのだけど

遺されたものにはその時間があとで宝になる

 

 

image

 

家族と患者さんを交えて

話し合った

患者さんの気持ちを一部代弁しながら

率直に話し合った

 

家族は

「そんな風に思っていたなんて・・」

「ごめん、おとうさん。無理させてた」

「家に帰りたいなら帰ろう?」

「もう無理しなくていい」

 

患者さん

「ありがとう、ごめんな」

「でもわかってもらえて嬉しい」

「もういうことはないよ」

「いつお迎えがきてもいい」

 

 

屈託なく率直に話し合うって

こんなに大事なんだということ

家族だからこそふみこめない

お互いに踏み込んだら壊れちゃいそうな

繊細な心

 

 

食べられなくなったことへの悲しみはきえないけれど

お互いに負担がなくなったのか

笑顔が増えた

 

そして

旅立ちのときも

家族が見守る中

ほんとうに静かに

 

 

お別れは寂しい

でもまた患者さんから

教えて頂いたことを

学んだ事を

次につなげる

それが使命なんだと感じている