乳がんの患者さんのご主人が

部屋の外で肩をふるわせて泣いていました

 

 

「どうしてこんなに急に・・・」

 

「申し訳ないことをしたと思ったら

泣けてきて・・・」

 

どうされましたか?

 

「前に、あいつに言われたんだ」

「余命を聞いたらおしえてほしいって」

 

だけどね・・・

 

「そんなのきかなくていい!」

「がんばらないといけない!、って

言ってしまったんだ」

 

 

「昨日も聞いてきたんだよ。

どれくらい?」

「こんなにつらいのがずっとつづくのは

いや、って言うんだ」

 

 

「そういう意味だったんだ・・・」

 

 

肩をふるわせて

涙がとまらない

 

 

 

以前にご主人から

絶対にマイナスのイメージになることは

伝えないで欲しい

余命予後も伝えないで

 

とにかくがんばれ、って言ってください

と言われた

 

もちろん私達は

負になるようなことは伝えない

が、

患者さん自身がつらい症状が増えてきたりすると

 

どうしてだろう?

がんばってるのに?、と

 

ひとり思い苦しむこともあるかもしれない

 

だから

本人が質問してきたときは

心情に配慮しながらお伝えすることも

あるかもしれない

 

 

とお伝えした

 

 

「そのときはその時って、思っていたけれど」

「やっぱりちゃんと伝えるべきだった」

 

 

「もうとりかえしがつかないね」

 

なんてことを、と話される夫

 

 

 

本人はもしかしたらわかっていたのかも

しれない

 

本人は夫について

こう話していた

 

「心配症でね。多分心配すぎて

夜も眠っていないの」

「だから、大丈夫としかいえないのよね」

「でも私の病気のせいで、

だんなが、たおれるのは避けたいの」

 

「私は、もうながくないとおもうよ」

 

 

 

家族とは不思議なもので

相手が思っていることを

察する

 

 

思いやりすぎて

言葉を失ってしまう

 

 

主役は患者さん

でも家族も主役

 

 

お互いを思いやるこの気持ち

余命を伝える、伝えない

それだけの問題ではない

愛情を感じた

 

 

 

妻は

もうながくない、と言い残した

2日後に

旅立った

 

 

夫は

退院するときに

 

 

「ほんとうに緩和ケア病棟ですごせて

よかった」

「最期のときを一緒にすごせたこと

大切にいきていきます」

「家族のぼくの気持ちまで救ってくれた」

 

 

深々と頭をさげられた

最初は緩和ケア病棟なんて

死をまつだけだ、何もしてくれないところだ

こんなところに来たらだめだ、というのを

本人が、ゆっくり過ごしたいわ、と

鶴の一声できめたのだ

 

じん、と胸の奥が熱くなった

 

なんだろう

この気持ち

 

 

 

これがまた明日につながるんだ

 

 

お疲れ様

またね