グッ

 

お部屋をたずねると

 

患者さんがグッ、とされている

 

やった!よかった!

私達も思わず笑顔になる

 

ここまで来るのには

少し色々あった

 

あしあとあしあとあしあと

 

まだがん診断まもない患者さん

今は治療方針を検討しているところ

痛みについては、主治医とも見解がわかれて

看護師さんは

”やっぱりつらそう、なんとかしてあげたほうが

いいんじゃないか”

主治医の先生は

”痛みの原因ががんかどうかわからないから

今はがまんできるようだし、様子をみよう”

 

一方患者さんも

“薬はできるだけ使いたくない”

”そんなことしたら人間だめになる”

”気力、気合いだ”

”薬?いらんいらん”

 

医師の回診は基本的に点

その瞬間しかみていない

だから、「大丈夫ですか?」と聞けば

「(今は)大丈夫です」 

となる

 

医師は看護師さんに伝える

「そんなに痛くなさそうだよ」

 

看護師さんは夜になり巡視にいく

すると

「痛いよ、このまま痛いのかな」

「つらいよ」

と、つらそうな患者さんを目にする

 

“痛そうだけど、先生はいいって言ったし”

“前薬すすめたけど、いいって言われたから

様子をみよう”

 

そして翌朝 医師の回診

「大丈夫ですか?」

 

患者さん

「はい(きのうは痛かったけど今は大丈夫だな)

大丈夫です」

 

医師は看護師さんに

「いたくないって言っていたよ」

 

看護師さん

「・・・・」

 

この繰り返し

 

あしあとあしあとあしあと

 

本来患者さんの痛いは

みんなで共有すべきで

患者さんの訴えが何よりも

重要

 

そして痛みも

ずっとでないことだってあることを

医療者が周知しておくべきである

みんなで集めた患者さんの情報を

まとめて整理して診断するのは医師の仕事なんだから

自分が行ったときの患者さんの姿は

全て、でないということ

 

緩和ケアチームの認定看護師が

ラウンドしているときに

その病棟の看護師さんから、相談を受けた

 

「やっぱり痛そうで」

「なんとかうまく調整できないでしょうか」

 

認定看護師は本人が許容すれば緩和ケアチームの介入は

どうか?と提案

 

病棟の看護師さんは主治医を口説いた

主治医は”だって痛みの原因もわかんないし?”

”がんの痛みじゃないかもしれないし?”

“緩和ケアチーム?まだ早いよ”

”まだ麻薬って感じじゃないし”

 

でも患者さんの気持ちに寄りそう看護師さん

口説いた

”患者さんは痛そうです”

”麻薬つかわなくたって、緩和ケアチームはいいとおもいます”

 

主治医も”それなら”と緩和ケアチームに紹介

 

それが患者さんとの出会い

 

あしあとあしあとあしあと

「いつも夜中に痛くなっちゃうから、

今晩も痛くなるんじゃないかって思うと

眠れなくなっちゃってさ」

「そうすると痛いんだ、必ず。

先ずはここらへん、だんだん背中に

引っ越ししていくんだ」

 

「でも薬はいやだよ」

「だってくせになるもん」

 

痛みについてはどうやっていたくなるのか

いつ頃いたくなるのか

自分で解決する方法はあるのか

 

色々うかがった

 

すると

夜中2時頃

自分では端座位になって、がまんすることで

やり過ごす

 

心配は

この程度の痛みで薬を飲んだら

いつか効かなくなっちゃうかもしれない、ということ

 

なるほど!

 

主治医の先生がおっしゃるとおり

痛みの原因はCTなどでもはっきりはしない

でも現実に痛い

 

いわゆる解熱鎮痛薬をためしてみませんんか?

 

「それは弱いの?強いの?」

「1日何回ものめる?」

 

3回くらいまでかな

 

「そんなにつかっていいの!」

「じゃあ1回つかってみる!」

「でも痛くないときに飲むのはいや」

「痛いときにのみたい」

 

そこで、先ずは

頓服でいたいときに、解熱鎮痛薬(NSAIDs)を

使用できるように説明

 

一晩目:夜中に内服 ⇒痛み軽減!! でも眠れなかった

二晩目:もう一度夜中にいたくなってから内服 ⇒痛み軽減!!

三晩目〜五晩目  しばらく続く

 

6日目 予防的に寝る前に飲んで夜中に痛くなることを

避ける方法を提案 そっか!やってみよう、と

 

そして

翌日

 

グッ

 

「作戦成功だよ。よかった!半信半疑だったけど

やってみたら。眠れたよ。」

「2,3か月ぶりだ」

「よく眠れたんだ、うれしいよ」

 

拍手拍手拍手

 

この言葉は私達の活力になるね、と相棒看護師に言うと

「そうですよね。元気持続させてくださいね」

 

あ、少し疲れてるのばれてた??

 

今日のことでしばらく元気!

がんばれるよ

 

家にかえったときの薬の使い方、相談していこう

少しでも楽に過ごせるようにね

がまんはしすぎなくていい

 

その人にあった方法を探索

その人の方法を支える

それでいい

 

グラサンハートグラサンハートグラサンハート

 

で、緩和ケアはいつでもいいですよ

痛みの原因がわからないなら

それそのものを

一緒に考えます

だから

原因がわからないからこそ

依頼してくださいね、と

主治医の先生には伝えました

 

主治医だって

ぜんぶかかえこまなくていいじゃない

なんでぜんぶ自分でって

思うのかな

緩和ケアチームは

痛みについて全人的に検討するチーム

麻薬を使うチームじゃないよ

 

いろんな専門職があるんだからね

 

まさか

痛みなんて、って

思ってないよね?

 

こつこつ

教育

こつこつ

拡げる

 

それが患者さんの安心につながるなら

主治医の先生との橋渡しになるなら

時間はいくらでもかけるよ