思ったより足がふらつくなあといいながら

妻に支えられて

自宅にもどっていくAさん

 

どうにか1泊を過ごしてくることが

できますように

 

夕方

夜勤にシフトが変わる頃

 

病棟の電話がなった

 

もしもし

 

「Aの妻です。やっぱり具合が悪いので

もどってもいいですか?」

 

だいじょうぶ?

 

「特になにかってことはないけれど

なんだか体の調子がおかしいから

自分でもどるって」

 

自家用車で戻ってこられました

 

「ただいま〜」

 

ついついおかえりなさい、と口にしてしまった

家じゃないのにね

 

「短時間だったけど、家に帰ることができたよ」

「やっぱり、これが限界なんだなあ」

「もう少し頑張れそうだけど

奥さんが心配そうな顔してるのもあって

帰るって言ったんだ」

 

 

妻「そうとうつらそうでしたよ」とボソッと

 

聞こえたかどうかは別として

 

「まあこれが現実なんだな」

「家の階段すら上がれなかったよ

婿さんにかついでもらったんだ」

「でもね、庭をみて、家の中をみて

ありがとうって言ってきたんだ」

「次もどる時はもうあっちの世界にいってからだな」

 

この外出になってしまった外泊が

よいのかどうか

それはわからない、と思います

 

賛否両論あると思います

 

そんな具合の悪い人を帰すなんて

とかいう人もあれば

本人が希望するのであればそれでいいじゃないか

という人もあるでしょう

 

みなさんはどう?

 

私個人としては後者です

 

医師としての思いはどちらも感じるかなあ・・・正直なところ

 

でも

 

でも

 

でも

 

限られた時間の中で

本人の希望を叶えていくことも

大事なことだと思うのです

 

緩和ケアをやりながら思うのは

 

慎重に

でも時に

大胆に

迅速に

 

迷っている時間すらもったいない

と感じちゃうとき

 

少し背中をおすことで

不安な家族をささえることで

 

患者の望みが叶うことがある

 

この外出を境に

 

病院にいるせいで体調がわるいってことは

口にされなくなった

 

病院食についても・・・

 

なんかせつない

 

今までみたいに病院にいるから具合がわるいんだ〜って

 

言って欲しい訳ではないけど

なんだか人がかわったように

おだやかに

 

 

まるで

その時がくるのを

静かにまっているようだった

 

生きるっていうのは

大変なんだね

 

私は

最大限の五感を

最大限の知識をもとに

最良の仲間ととともに

 

患者さんのためを考える

 

“緩和ケア”

なんといわれようとそうしていく

患者さんファーストの気持ち

おもてなしの気持ち

 

大事だものね

 

口笛口笛ラブラブ