70代の女性

胃癌の術後。数年は経過がよく順調にすごしていました。

術後の抗がん剤を勧められたけれど、本人の希望もあり行わずに経過観察を

していました。

 

しかしあるときの定期健診から腫瘍マーカーが上昇

最初は明らかな転移巣も見当たらなくて、抗がん剤治療を行うことは躊躇していた。

でも、通過障害が生じてきて

固形物を受け付けなくなってしまった

水分はなんとか。

 

もう一度画像検査をすると

腹膜播種、がん性腹膜炎の所見がみられた

 

比較的元気で、生活も自立

娘さん家族と同居だけれど、ご飯の準備は患者さん本人が

全員の分を作っていたくらい

 

もちろん抗がん剤の提案がなされました。

娘さんは本人の希望に沿いたい、と話しました

患者さんはなんて答えたと思いますか?

 

「抗がん剤を行えば治りますか?」

「私は夫を亡くしてから、娘家族とたくさん楽しい時間を過ごしてきた」

「これからもう少し孫達にご飯を作ってやりたいんです」

「もう寿命は生きたと思うの。抗がん剤をしたら、孫と過ごせますか?

娘夫婦に迷惑をかけませんか?」

 

娘さんは目をうるませて

「お母さん、ありがとう。ごめんね」

「お母さんに生きて欲しい。一日でも長く、一分でも一秒でも」

「私は抗がん剤治療を受けて欲しいけど。お母さんのいいほうでいいよ」

 

患者さんは本当に優しい目をしている方で

思い出しても私もうるっとしてしまうのですが

 

娘さんに「ありがとうね。私に生きがいをくれて」

「でも少しわがままを言ってもいいかしら?」

 

「先生?私にとって抗がん剤は

これから過ごすのにどうしても必要ですか?」

 

・・・

主治医の先生は一瞬言葉を探すような表情をされたそうです。

 

「どうしても必要ではありません」

「でも、ぼくは受けた方が少しでも延命はできると思う」

「もう少し考えてみてもよいです。緩和ケアの先生にも会って相談してみますか?

 

そう言われて緩和ケア外来を受診されました。

それが出会いでした

 

続きます

緩和ケア外来を受診したい!って

言ってもらえるようになりたいなぁ