「プロ」としての請負
1、請負の本質
改正派遣法が4月6日に公布されました。施行は秋になるでしょう。
この改正とのからみで、派遣で行なっている業務を請負化できないかという相談をよく受けるようになりました。
請負の定義については、基本的には民法という法律があり、「仕事の完成」ということが中核になっている契約であることがわかります。
ただ、これが派遣との対比における「請負」ということになるともう一つ重要なルールが出てきます。周知のとおり、昭和61年労働省告示第37号がそれであることほかなりません。
この告示37号によれば、もしも自分たちを「俺たちは請負業者だ」といいたいのであれば、自分の雇用するスタッフの労働力を自ら直接マネージメントすることと、請ける仕事自体も発注者に依存しないほどの独立性を有していることが必要とされています。
告示37号の規定は非常に読みにくいものですが、ざっとみていると一つのメッセージを感じます。
労働力の直接マネジメント、仕事の独立性、単なる肉体的労働力提供ではダメであり、業務処理に必要な機器を有していたり、業務自体が専門的ないし経験を要するものであること。。。
これらを通じて感ずるのは、どうも告示は、「請負業者」に対してプロフェッショナルとしての自己完結性を求めているように思われるわけです。
プロなんだから、仕事にやり方に関しては発注者の指図なんか受けない。
プロなんだから、スタッフの配置も自分たちで決定する。
プロなんだから、仕事自体があくまでも自分たちの仕事であって発注者には依存しない。
プロなんだから、資金調達も自前で行なうし、仕事に必要な機器も自己調達する。
プロなんだから、仕事は専門性があり、経験を要したりする。
細かい解釈やその根拠は別として、少なくとも「プロ」としての能力を要求されていることは間違いありません。
請負にまつわる諸問題を考える際には、まずは大きく、「プロだったらどうするだろう?」「こういうことをしててプロといえるんだろうか?」と自問してみてください。
2、機器の自己調達と賃貸借の論点にみる「プロ」性
告示37号の一要件として、自己調達した機器によって業務遂行することが求められている局面があります(常に必須であるわけではありませんが)。
しかしなから、機器をすべて自前でそろえるのはなかなかたいへんですし、相手方の構内で請負を行なう場合などはそこに必要な機器があることも多いため、それを借りることができれば合理的です。
そこで、告示の解釈としても、機器はすべて自分で買う必要があるわけではなく、相手方から借りてもいいよ、としています。ただし、借りる場合には、ちゃんとお金を払って借りてね、と念押ししています。お金を払って借りる、つまり双務契約たる賃貸借契約を別途に結んでくれ、というわけです。
これは要するに、
「請負業者なんだから仕事に必要な機器は自前調達がほんらいだろう」
「でも、全部買えというのも酷だし、そこにあるのならそれを借りても良しとしよう」
「ただ、本来は自分で資金を用意して調達すべきなんだから、借りるんならそれなりの対価を払えよ」
「それがプロというものだ」
というロジックなんだと思います。
3、賃貸借契約が必要な場合
(1)どんな場合にまで、この賃貸借契約を結ぶ必要があるのかは必ずしも明らかではありません。たとえば、請負を行なう作業場所についてはどうでしょう?
この点、参考になるのが、厚労省が出している「労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関するQ&A(以下Q&A集と略します)」です。この解説をもとにして、先述の「プロ」性との関係を考えてみましょう。
(2)以前は、作業スペースを供与してもらう点に関しても双務契約、すなわち賃貸借契約を結ぶべきとするような行政指導がなされていたような記憶があります。
この点、Q&A集では、その13番において異なった解説がなされています。
つまり、請負業務に関して直接必要なものに関しては、相手方から借りる場合には賃貸借契約が必要だが、間接的に必要なレベルのものであれば別個の賃貸借契約は不要としており、その例として、請負業務を行う場所をあげているのです。
要は、直接必要か間接的に必要なレベルにとどまるかが分水嶺になるわけです。
(3)では、どこまでが「直接必要」であり、どこからが「間接的に必要」なのでしょう? このあたりは一概に定かとはいえない感じです。
たとえば先の作業場所ですが、仕事をするのに作業場所はほとんど必須ですので、なにかしら作業場所も「直接必要」のように思えます。
しかし、もしそのように考えてしまうと、空中に浮かんで仕事をするのでない限り、常に作業場所は「直接必要」になってしまいます。Q&A集の結論とは異なってしまいます。
ここで一つのメルクマールになるのが、「プロ」性だと考えます。
通常の場合、宙に浮いて仕事するわけにはいきませんから、誰がやろうがいくばくかの作業スペースが必要になってきます。それを相手方から供与してもらったからと言って、それは誰にしたってそうならざるを得ないことであるわけです。
言い換えれば、通常の作業スペースレベルであれば、たとえそれを貸してもらったところでプロの沽券に関わる問題ではないと思われるのです。
したがって、そのような場合であれば、別個の賃貸借契約までは不要ということになる、というのがQ&A集を敷衍したロジックになります。
(4)基準として重要なのは、あくまでも「直接必要か間接的に必要なレベルなのか」ということです。したがって、「作業場所」であればすべての場合において別個の賃貸借契約が不要となるわけではありません。「直接必要か間接的に必要なレベルなのか」がポイントであって、その実質を考える際に「プロ」性が参考になるわけです。
セミナー等でよく挙げる例を再掲しましょう。
たとえば精密作業に必要なクリーンルームだとか車の走行試験に必要な周回サーキットなどは、「作業場所」ではあるけれども、請負業務に必要不可欠です。請負業務をプロとして遂行するためにの核心といえるものです。こういうのは「直接必要」なものだと考えます。
要は、専門業者としてプロの仕事を行なうのが請負業者なのであるから、プロの仕事を行なうだけの能力や設備は用意しておけ、というのがルールの趣旨なのです。
半製品に作業を行なって完成させる際の半製品を双務契約にて購入する必要があるか、機密の問題等から相手方のPCに組み込む必要があるソフト開発を請ける場合にそのPCを賃貸借契約にて借りる必要があるか、など、ひとつの応用問題として考えてみてください(前者はQ&A集にも解説があります)。