どうなってしまったんだろう。

この人がジンだったなんて…

思考が停止する。

あんなこと、こんなことが走馬灯のように蘇る。

あの時私は…

事故でパパとママを亡くしてしまって、途方に暮れていて…

そんな時、不意にに現れたのがジンだったんだ。

 

 

 

 

でもちょっと待って。

何か変だ。

私はとてつもない違和感を拭いきれずにいた。

あれから少なくとも15年は経っているというのに彼はあの頃とまったく変わっていないのだ。

彼は歳を取っていなかった。

あらためて無邪気な瞳で微笑んでいる彼を隅から隅まで凝視する。

さっき宇宙飛行士のオブジェの前で佇んでいた彼の姿が脳裏をかすめていた。

 

「ジン…あなた宇宙人じゃないよね…」

 

「宇宙人?」

 

彼は小さく首を傾げて微笑んで、

 

「僕は宇宙人じゃないよ」

 

そう言ってコーラのグラスを持ち上げて一口飲むと、

 

「うーん…敢えて言えば…Astronaut(宇宙飛行士)かな」

 

私の頭の中は、増々こんがらがってしまうばかりだった。

表情も変えずにそう言ってのける彼が少々憎らしくさえ思えた。

 

「それより、『きなこ』は元気?」

 

彼から『きなこ』という言葉が出てはっと思い当たった。

そう、私の一番大切な友達、フクロモモンガの『きなこ』は彼からあの時貰ったんだった。

私ったらそんなことも忘れていたのかなと、少しの違和感を感じたが、今日は違和感だらけの日なので、もはやあまり気にならなくなっていた。

なので元気だよと言うように頷いてだけ見せた。

 

「そうーー会いたいな…」

 

その彼の一言で、私は彼を自宅に招く羽目になってしまったのだった。

 

(to be continued)