ペンキの剥げかけたドアの鍵穴に鍵を差し込んで、私はジンを部屋に招き入れた。
少しドキドキする。
多分この部屋に異性の友達を入れるのは彼が初めてだと思うし----
私はジンの顔を彼には気づかれないように盗み見た。
彼の顔は私の想像通り、平常心そのものだった。平常心以外の何者でもないくらい。
まあ、それも当たり前なのだと思った。今の彼の興味はきなこだけなのだ。
「きなこ、きなこさん、お客さんよ」
私は冗談めかして部屋の隅のケージに向かって声をかけた。
いつもなら私が帰ってくるなり、大騒ぎでケージをガタガタやるはずなのに、なぜか今日は予想外にシーンとしている。
「やだ、もしかしてあなたハンサムなお兄さんに恥ずかしがってるの?」
私はまたもや冗談めかしてケージを覗き込んだ。
「きなこ、出ておいで...」
なんだろう。この胸騒ぎは…
いや違う。眠ってるだけ…
「きなこ、出ておいで」
私はきなこをそっとケージから出した。
「きなこ……?」
きなこを抱いた手が、私の意図しないところでわなわなと震え出すのを感じた。
冷たい…
ねぇ、きなこ…
なんでこんなに…
目を開けて。
お願いだから。
いつものように一緒に遊ぼう。
ねぇ、きなこ……
涙で視界が曇ってきなこがぼやけて見える。
私は湧き上がる嗚咽を止められなかった。
その時、肩にふわりと優しい重さを感じた。
「きなこはもう旅立ったんだ…」
ジンは私の肩に手を置くと、穏やかにそう言った。
彼の手のひらの温かみが、肩から私の体全体へ広がっていった。
「命には寿命がある…君にも僕にも、そしてきなこにも…わかるよね」
ジンの言うことはわかった。
両親を早くに事故で亡くした私には、彼の言うことは他の人よりよくわかる。
でも、今の私は、ジンの胸に顔を埋めて泣きじゃくることしか出来なかった。
(to be continued)
