結婚ってなんなんだろう、と最近考えることが増えた。
一生、ひとりの人と添い遂げる。その人しか愛さない。その人としかセックスしない。
考えれば考えるほど分からなくなる。
主人は、割と言葉で伝えるタイプだ。
好きだよ、大好き、今日も可愛い。男の人の中では珍しいタイプだと思う。そう言われると素直に嬉しい。すかさず、わたしも好き、大好き、本当にかっこいい、と答える。
よそからみたら馬鹿げていると思うだろう。わたし自身も少しそう思うから。
いま、わたしは主人の子どもを身籠っている。
妊娠してから色々変わった。太ったし、肌の調子も良くないし、体調が悪く家事を疎かにしてしまうこともある。一日中家にいるから、化粧もあまりしなくなった。働いていたときは、毎朝早く起きて化粧をして、主人が褒めてくれた香水をつけて会社に行っていたのに。
だんだん、自分が「女」から「母」になっていくのをひしひしと感じている。とてつもない危機感。
それにつられるように、主人が浮気をするんじゃないかと不安でしょうがない。
二人で出かけて、綺麗な、痩せていて、流行りの服を着た女を見ると辛くなる。ああ、可愛いなあ。わたしもああなりたい。主人と自分の子どもがお腹のなかにいるのは、この上なく幸せなことなのに。
一日に一回は想像する。たとえば、わたしの知らない細くて可愛い女と主人が並んで歩いているところを。腕を絡めて、どこかホテルに入って、お互いの素肌を合わせて快楽を求めているところを。
耐えられない。
主人のからだをわたし以外の女が触れているかと思うと、お腹が怒りで熱くなる。
そんなことない、そんなことない、そんなことない。だって、今朝も大好きだと言われたし、ハグもしたし、キスもした。だから大丈夫。馬鹿げた妄想をして、自分を苦しめて、自分で励ます。呆れるようなルーティーンだ。
男性は浮気をする生き物だ、というのはたぶんそうなのだと思う。自分の種を撒くため本能的にしょうがない、とも。だけどそこで、道を間違わないで、ちゃんと一生添い遂げると決めた人だけを見つめることができる人は何人いるだろう。そのなかに、自分の主人は含まれるのだろうか。
「浮気をするなら、バレないようにして。絶対に中途半端にしないで」
主人と付き合ってから七年間、わたしはそう言い続けてきた。主人はその度に「そんなことしないよ」と笑い飛ばしてきた。
それを忠実に守ってくれているのかもしれない、と少し背筋が寒くなった。