今週の1冊は、「花まる学習教会」代表、高濱先生の1冊。
タイトルに惹かれて読んだのですが、
子育てにおける様々なエッセンスがギュッと詰まっており、
先生の講演会が常にキャンセル待ちで溢れ返るというのも納得。
すぐ読めるので、育児本導入として読むのに最適です。
「生きる力」をはぐくむ子育て
高濱正伸
【内容レビュー】
作文、読書、思考力、野外経験を重視した学習教室「花まる学習会」設立者、高濱先生の本。花まる学習会で大事にしている思想がギュッと凝縮された1冊となっている。
学力を高めるためには、子どもの「生きる力」を高めることが必要であるとする。ここで言う生きる力とは「知識や技能を身につけ活用する力」「学びことへのやる気や意欲」「自分で考える力」「自分で判断する力」「自分を表現する力」「問題を解決し、自分道を切り開いていく力」と定義されている。
そして、そのような力を身につけるには、とにかく自然の中で、自然を感じる外遊びをすること、そして親が子どもの「今」を守るのではなく、「将来」を見据えて、様々な苦労を乗り越えさせることがキーであると提言する。
生きる力が子どもに養われるかどうかは、親が用意してあげる環境に拠っている。家庭での会話、日々の遊び、ゲームとの付き合い方、お手伝いのさせ方、など、家庭ですぐにでも取り入れられる提言が多い。子どもの成長にとことん関わってきた著者だから言い切れる日々の生活の大切さが詰まった内容である。
【参照ポイント】
・生きるということは甘くない。困難なことに遭遇した時に自分の中に強い気持ちがないと乗り越えていけない。ひきこもりや働けない大人たちが増えてしまったのは生きることが大変だということを誰も教えてこなかった結果。子どもたちは相当な試練に耐えられる強い一面を持つ一方、常に自分の勝手になる領域を広げようとする一面も持っている。大人たちが子どもに根負けし、許し、甘やかしてしまうことで試練に耐えられない子どもたちを育ててしまっている。
・最近では、オムツのとれない1年生もいる。嫌な気持ちを味あわせたくないというお母さんの配慮であろうが、そのような「今だけの取り繕い」が将来どんな結果につながるのかを真剣に考えなければならない。
・子ども同士のちょっとした問題にも親が出てきて仲裁をしてしまったり、赤ちゃんの時から「他人の迷惑にならないように」ということに細心の注意を払い、もめごとが始まりそうだと慌てて引き離してしまう。そんな環境下では、子どもは「人との付き合い方」を学ぶことはできない。
・大人と子供は平等な存在であり、親が子どもに強制するのはよくない。子どもの自立や自己決定権を重視しようという考えが強くなっている。何でも話し合って、子供の意見も尊重してみんなで決めるのが良い家庭だなんてとんでもない。親子で嫌な思いをしたくないという親が、親としてのけじめを見せられず、ずるずると物分かりよく許しているうちに、子どもは「自分が一番偉いんだ」という幼児的万能感をつぶすことができないまま成長してしまう。
・子育ての目標とはただいひとつ。子どもを自立させること。その第一は自ら食べていける経済的自立、そして自らの哲学と意欲、生きがいを持って働ける精神的自立、様々な人間関係を生き抜いていくうえで重要な社会的自立が必要。今の苦労を先回りして一つ一つ取り除いてあげるよりも、将来を見据えて様々な苦労を自分で乗り越えていける「生き抜く力」を育てることが最も大切。
・子どもの思考力を引き出すきっかけとなるのは、「良質な驚きと感動」。驚き、感動するからこそ、自分でやろう、自分で考えようとする動きが起こる。その良質な驚きや感動の題材として、自然界の動植物や地形の造形は最高のもの。原体験として、良質で深い感動を蓄積すること、それも遊びを通した自発的な取組の中で味わうことで脳は発達する。
・多くの研究で、偏食と意欲や好奇心の弱さとの相関関係が報告されている。○○はキライ、△△はできない、と自らの内側に築き上げた心の壁があった時に、その壁に挑戦し壊そうとする働きの弱さが「偏食」に現れている。
・かわいいかわいいでは人は育たない。揺るがない叱りの基準を親自身が見つめ、厳しく怖い叱りを、与えるべきタイミングで、感情的にならずにきちんと与えること。子どもに考えさせ、判断させることは大事だが、最終決定権は親が持つという原則を揺るがせてはいけない。
・子どもの感じる心を育てるには、母親が口に出すことが大事。道端の花を見て、「きれいだなぁ」と口に出して言うこと。母親自身が感じたこと、発見したことをあえて言葉にすることが大事。
【一言コメント】
高濱先生の本は2回目の紹介ですが、先回紹介した本よりさらにベースの概念である「生きる力を伸ばす」ということを扱っているという点もあり、学習面よりもさらに「生きること」「生活すること」に焦点が合った内容で、小さな子どもに対しても取り入れやすい思想が多かった。15年もの間、子どもの成長に寄り添い続けてきた高濱先生だからこそ、私が今まで紹介してきた本のエッセンスが散りばめられている。
古来から伝わる子どもを育てるために必要なもの、近代に入って開発された教育理論、そしてこのように現場で肌感覚で磨かれていく子どもへの視点、全てに共通しているのは「子どもの自立」を促進していくことが親の役目であること。
そのために、親はどんどん意図的に子どもの手を離すこと、親の手から離れた子どもはどんどん自然の中で感覚を最大限使って遊ぶこと。発達した現代社会ではそれが難しくなっていますが、それでもそんな機会を親が用意していくことの重要性を改めて実感した1冊です。
【考えてみませんか?】
子どもに自然と触れ合う外遊び、させていますか?
