ワタシタチ、ニホンカラキマシタ。イマ、ニホンヲタビシテイマス。

 夕方。水戸黄門を再放送している。

 

先日、妻と家電量販店に私の予てからの希望の故、高額家電を購入に池袋に。

妻との協議の結果、高額家電は低金利分割購入に決定。分割購入するには分割購入するお客様の身分を証明出来る何かが必要との事。しかしながら私は常に不携帯。妻は常に自身の身分が何かを証明出来る何かを常に携帯の為、妻名義で購入する事に。

分割購入には審査が必要と説明を受け、妻と二人並び飛沫シート越しに店員さんが面接。

審査の確認には審査を行う会社から送信される記入事項を妻のスマートフォンに入力下さいと店員さんから伝えられた。

記入事項入力際、妻「うわ~ダメだ!」店員さん「大丈夫です」妻「ハイフンが全角入力全然出来ない!全然出来ない!」店員さん「大丈夫ですよ」妻「入力したの全部消えた!全部消えた!」店員さん「大丈夫です」妻「うわわわあ~もう辞める…辞めたい…辞めていい?」私「辞めていいよ」店員さん「大丈夫ですよ」私「辞めていいよ」店員さん「大丈夫ですよ」

少々時間が掛かると判断した店員さんは他のお客様の対応に。「申し訳ございません。担当者変わりますので失礼致します。」

 

黄門様一行が茶店で休憩。「さ、行きましょうご隠居」「さてと、参りますかなカッカッカッ」「あいてて、あいつつ。あたらいつ。しくしく腹が痛えーな畜生!参ったな~もう」「しょうがねー野郎だな八の奴は。ご隠居どうなされますか。」「ホッホッホ。助さんや仕方ありません。八兵衛もあの様子。今夜はこの辺りの旅籠に泊まる事にしましょう。」「そうしましょうそうしましょう…ヘヘ…ヘクション!」「おい八?今度はどうしたんでい」「風邪もひいちまったみたいで…」

 

妻の入力は無事に終わり、次の担当者さんが妻と二人並ぶ飛沫シート越しの前に。

二人目の担当者さんは私を見つめながら私の目の前に座り、安心した妻は私の隣に座っている。二人目の担当者「最後に確認の為、お名前をお願いします。」

私「…」

二人目の担当者「……⁈」

私「……」

妻「ヤマダハナコです」

 

八兵衛は上司の源さんと南町管轄内の呉服問屋、長屋、廻船問屋を巡回した後「父の病が治りますように…」と寺で拝む娘さん、その娘さんを狙い忍び寄る悪人に出くわす。

「おうおう!手前の親父の借金の返済。滞ってんのはどおゆう事でい!」「申し訳御座いません親分。父の仕事道具は借金の肩に親分に取られ稼ぎも無く、母は長年病の床。何とかお金はお返しします!。この度は何卒!何卒…!」「本当だろうなあ。へっへっへ3日待つ。3日で返せなければおめえさんの身を売って貰う事になる。て事になる。野郎ども!て事になるから行くぞ!」

 

八兵衛「しかしなんですね、オイラあの娘が不憫で仕方ねえや。」

源さん「しかしな辰。あの場合はどうしようもあるめい。」

八兵衛「御奉行様も名奉行なんて言われちゃって天狗になってんじゃありませんね。」

源さん「馬鹿な事言ってんじゃねえぞ辰。若ならきっと何とかして下さる。」

御前「おい源さん、辰。何やってんでい。なんかあったのかい?。話聞いてやるから一杯やろうじゃねえか」と桶に入った鯉を見せ行きつけの「たぬき」なる飯処に向かって行く。

 

……おかしい。さっぱり分からない。なんで八兵衛は旅に出ないで源さんて人と悪人を探したり捕まえたり十手振り回したりしているのだろうか。あんまりニコニコしてないし、しかも肝心な黄門様が出てこない……。

 

分かった。

 

そう、「水戸黄門」ではなく「大岡越前」。

高橋元太郎さん演じるうっかり八兵衛のイメージが強く、すっとびの辰三を観ても違う事に私と同じく一瞬気がつかなかったのです。二人目の担当者さんは

ご主人と奥様が並ぶと「ご主人名義」かなってイメージがあるのでしょうか。すっとびを観てもうっかりだとイメージするように。二人目の担当者さんは名義が妻である事を知らず、ほぼほぼ私の目を見ながら面接を行っていたのです。妻が「ヤマダハナコです。」と答えたとき、なんとなく二人目の担当者さんが気の毒で、私も「ヤマダタカオです。」とつい言いそうになりました。

 

終わりに。

 

「さらば涙と言おう」という日本の歌謡曲をご存知でしょうか。昭和の懐メロ番組で必ずと言って良いほど「さ~らば~な~みだといおう~♪」と流れているアレです。

さらば涙と言おう。意味が分からない。え、何?。別れ際に「さらば」ではなく「なみだ」って言うってことなの?。

例えば部活の帰り道。「ヨシコ~。なみだっ!(さらば)。」「キョウコ~。なみだっ!(さらば)。」って事なの?。飲み会でグニャグニャに酔っぱらい、お開きの際に皆で「なみだなみだ(さらばさらば)。」って言うって事なの?。……意味がさっぱり分からない。

 

久々の帰省。帰京の際。

「気い付けて帰らんばんよ」

「また来年の夏に帰るから」

「また」

「またね」

 

なみだ。

 

「さらば涙と言おう」。涙が出るほど寂しいよって事を伝える為に「さらば」ではなく「なみだ」。という事だったのか。

 

ワタシタチ、ニホンカラキマシタ。イマ、ニホンヲタビシテイマス。