2024年1月、「そしてバトンは渡された」を観た…絶好のタイミングで観たことに後から気づいた。そしてハマッた。

この映画、田中圭が出ていたという印象しかなかった。ああ永野芽郁も出ていたんだ。石原さとみも、という感じだった。

 2023年度下期といえば、日本に現在2枠しかない半年続くドラマ、「相棒」と「NHK連続テレビ小説-ブギウギ」で、水谷豊と趣里の親子が主演と務めていた。朝ドラを最初から最後まで完走したのは「ひよっこ」以来だ。2024年1月と言えば、年末の紅白歌合戦に伊藤蘭が出演し、元旦の「相棒スペシャル」が能登大震災で中断、1月2日の「とんねるずのスポーツ王」に水谷豊が出演して渋野日向子に家族について聞かれるシーンがあった。その勢いで「ブギウギ」は愛助さん編がクライマックスを迎える。そんな中で、なんの前提知識もなくこの映画を観た。

1.赤い激流

 永野芽郁の高校時代のシーンに突然「岡田健志」が現れた。「相手役はデギウギの愛助さんの人か」と眺めていたら、突然「英雄ポロネーズ」を弾きだした。ピアノの天才という設定だった。私の記憶は、いっぺんに昭和52年の「赤い激流」に飛んだ。赤いシリーズ史上最高視聴率を叩き出したこの作品の実質的主人公を演じた水谷豊が劇中で弾いた曲だ。あまりのインパクトに、40年以上経過した今でも耳から離れない曲である。この曲は水谷豊の得意曲となり、「相棒」でも弾いてみせたシーンがあった。

 岡田健志-水上恒司は、「中学聖日記」で有村架純の相手役としてデビューした「年下の男の子」俳優というだけで「ブギウギ(9つ年上の主人公と恋に落ちる役)」にキャスティングされたわけではないことを知った。

2.血のつながらない母子

 心は「大映ドラマ」をめぐっているとき、ふとしたことに気づいた。石原さとみは血のつながらない娘である永野芽郁に深い愛情を注ぐ。何も知らない批評家が「あれは不自然」と批判していたが、大映ドラマを観ていれば納得がいく。すなわち、「赤い疑惑」である。このドラマにおいて、石原さとみは実の母の兄夫婦に育てられる。血のつながらない娘に深い愛情を注ぐのは、今は亡き「田中好子」演じる母である。伊藤蘭の「相棒」であり親友、趣里が最も尊敬する女優とのことである。「赤い疑惑」をちゃんと観ていれば、石原さとみの「娘への愛情」にとても納得がいくのである。病弱であり、ラストで死んでしまうという設定も似ている。

 さらには、岡田健志の母親の戸田菜穂も大映ドラマでは血のつながらない母親に育てられている。「スチュワーデスの恋人」である。叔父の妻の役は「五十嵐めぐみ」であった。岡田健志のデビュー作である「中学聖夫婦」のモチーフとなった「高校聖夫婦」では主人公(鶴見辰吾)の姉を好演していた女優である。

 で、気づいた。「スチュワーデスの恋人」の戸田菜穂の養父である叔父が「内藤剛志」、「赤い疑惑」の石原さとみの実の父が「内藤剛志」ということは、この2人はいとこ同士なのか。つまり、永野芽郁と岡田健志は血のつながりはないものの「はとこ同士」だったのか。

 なんとも深い映画だ。