U.S. Chemical Safety and Hazard Investigation Board | CSB

Final reprot

ストーリー

 2016年11月22日ルイジアナ州のエクソンモービルの製油所で可燃性ガスの流出と火災が発生し4名の従業員が重傷を負った。

 プラントオペレーターがギア式のプラグバルブを操作しようとしたがギアボックスが故障し動かなくなった。同様の故障は頻繁に発生していた。プラントオペレーターは保守担当者にいつもの慣例となっていたギアボックスとバルブを切り離し直接バルブステムをパイプレンチで回して開ける作業を要請した。

 現場に到着した保守担当者はギアボックスとバルブを切り離すためにギアボックスが固定されている4本のボルトを抜いた。ボルトを緩めステムを回した瞬間に内部の可燃性のプロセスガスが吹き出た。ギアボックスを固定するボルトは加圧部であるバルブボンネット (Top-Cap) を押させるボルトでもあった。

 ギアボックス付きの同じタイプのバルブが約500台がこの工場で使われている。その中の15台がこの古いデザインのバルブボンネットの固定ボルトがギアボックスの固定にも使われている物だった。新デザインのバルブはギアボックスの固定には独立した専用のボルトを使用している。この作業は工場の管理者も容認している作業だったが、ギアボックスを安全に取り外す方法や安全への配慮等を指示する手順書やトレーニングは作業者に提供されていなかった。一部のオペレーターはこの作業を行うことに違和感を感じていたが、他のオペレーターは、慣例となっているこの作業を特別な注意を与えずに保守担当者に依頼した。

ピックアップ技術英語

事故が発生したバルブの各部品の名称です、ほとんどカタカナ英語で日本語になっていると思います。ストーリーの中ではTop-Capをバルブボンネットと訳しました。”上蓋”もよく使われる用語だと思います。

Valve Stem

Stemを辞書で調べると「草木の茎、幹」と出てきます。バルブ(弁)のプラグ(内弁)を動かすための棒状の部品を指します。この事故はギアボックスとバルブステムを切り離しバルブステムをレンチで直接回そうと圧力がかかるTop-Cap(上蓋)を押さえるボルトを緩めてしまい事故が起こりました。

ちょっと考察

会社としてこのバルブが安全上問題があると特定され更新が進められていた。500台のバルブのうち15台だけが残っていた。もし古いデザインのバルブが100台残っていたらどうだったろう?全体の3%の不安全なバルブの存在ここにも大きな危険が潜在していたように思う。おそらく保全担当者は「来年は全部更新する予定だったのに・・・」などと悔やむ声が聞こえてきそうだ。あと1歩、あと少しの所で油断してしまう、人の弱みの一つだろう。徒然草の「高名の木登り」を思い出す。

*当面は月に1回を目標に記事をアップしていきたいと思います。