※しばし茶番をお楽しみください
俺の名はアントニー。
ここは美の神ビーナス様が治める第6世界だ。
ビーナス様はこの世界に、自分が気に入った容姿の美しいものだけを集めた楽園を作り上げた。
俺はかつてここの住人だった。
しかし熱病にかかってしまい、脚を不自由にしてしまった。
ビーナス様はそんな俺を見て『美しくない』という理由で壁の外に追放したのだ。
しかし、そんなことはもうどうでもいい。外に出て初めてわかったのだが、みせかけだけの壁の中よりここのほうがずっとすばらしい!
…だが、気がかりなことが一つある。それは幼馴染のオリビアのことだ。
どうやらビーナスの命令で近々、ユリウスと結婚させられるらしい。
オリビアだけはなんとしてもビーナスの魔の手から救い出したい。
しかしビーナスは『秘宝』を持っていて、とても俺では太刀打ちできない。
この世界は77個の秘宝の力によって存在している。
噂によればすべての秘宝を揃えたものは、何でも願いが叶うそうだ。まあドラゴンボールみたいなものだな。
そしてドラゴンボールと違う点は、秘宝は一つでも手にしていればそれなりの力になるということだ。
そんな悶々とした日々を送っていた俺にチャンスがやってきた。
どうやら冒険者が秘宝を求めて、この世界にやってきたらしい。
冒険者が秘宝を見つけたら、何とかそれを手に入れてビーナスに対抗するのだ。
何とか秘宝は手に入れた。
あとはオリビアを取り返すだけだ。
ビーナス「オリビア、ユリウスを夫として生涯愛することを誓いますか?」
オリビア「は…は…」
アントニー「ビーナス!この秘宝の力でおまえを倒してやる!」
ビーナス「ほう、まだ秘宝があったとは。しかしお前のような虫けらが、この私に指一本でも触れることができると思ったのか?ばかめ」
アントニー「うわああああ!!」
オリビア「ア、アントニー…」
オリビア「お願いです、ビーナス様!この人を助けてやって下さい。私はユリウスと結婚します。ですからどうかお許しを!」
ビーナス「オリビア、あなたは私に指図するつもりですか?この男を助けろと」
オリビア「そんな!ただ私は…どうかお許しを…」
ビーナス「駄目です!そこをおどきなさい!」
オリビア「…」
ビーナス「そんなことはゆるしません!」
オリビア「それではこうすれば」
オリビアはアントニーのナイフで自分の額を傷つけた
オリビア「さあ、これで私はここにはいられません。壁の外へ追放してください」
ビーナス「なんということを!💢」
ビーナス「美しさを破壊するとは!私に対する裏切りです!ゆるせません!」
冒険者「あんた勇気があるな」
アントニー「すいません…」
冒険者「秘宝は返してもらうよ」
オリビア「あなた達は…」
冒険者「悪いようにはしないよ(。•̀ᴗ-)」
ビーナス「おまえたちまで私に歯向かうのか!」
冒険者「今のあんたが一番醜いぜ!
茶番終わり
これはもう30年も昔のゲームですが、見た目の美しさに執着するあまり、本当に美しいものが見えなくなったビーナスを強烈に皮肉った台詞がクソガキの僕に衝撃を与えてくれました。
近年、見た目至上主義社会と言っても過言ではないくらい、老いも若きも男も女も皆美しさを求めているように思います。
ツイッターやインスタグラムでは容姿の美しい人達が『いいね』をされ、ネットの広告もダイエットや美容に関するものばかり。
そういうのを見ていると、時々このゲームのことを思い出すんですよね。もしかしたら、僕達もこのビーナスのようにルッキズムに囚われすぎていて、大切なものを見失っているのかもしれないと。
もちろん、見た目の美しさもこの現代社会を生きるにはとても重要な要素だとは思います。しかしそればかりに囚われず、いろんな視点から物事を見極めていくことも同じくらい大事なんじゃないかと思ってしまいますね。

















