犯人逮捕あきらめない 橋本さん殺害から4年
金沢市久安の自宅アパートで2008年6月、会社員橋本清勝さん(当時22歳)が殺害された事件の発生から27日で4年がたつのを前に、遺族や知人らでつくる支援団体「清勝会」などは17日、現場近くの交差点で情報提供を呼びかけた。橋本さんの父充史さん(46)は、「犯人を捕まえるために、我々のできることをやっていく」とあきらめない覚悟だ。
事件は、橋本さんが発生から2日後の夕方、アパートの自室で頭から血を流して倒れているのが発見されて発覚。フライパンで複数回頭を殴られており、脳挫傷で死亡。上半身裸だったことや、携帯電話がなくなっていたことなどから、顔見知りによる犯行の可能性が高いとみられている。
金沢中署捜査本部はこれまでに、延べ2万7000人の捜査員を投入し、橋本さんの友人や職場の同僚ら1200人以上に話を聞いた。現在も30人が専従で捜査を続けるが、事件解決につながる有力な手がかりは得られていない。
17日の活動には、橋本さんの家族のほか、清勝会のメンバーが約25人、殺人事件被害者遺族の会「宙の会」の2家族らが参加。横断幕やパネルを掲げたり、チラシ1000枚を配ったりして情報提供を呼びかけた。
母真由美さん(47)は、近く会員制交流サイト「フェイスブック」を利用して情報を集める予定で、真由美さんは、「科学捜査も進歩しているので、絶対に捕まると思っている」と解決を願った。
◇「解決まで」知人ら結束
遺族らと17日、活動を行った清勝会の中谷幸夫会長(46)は読売新聞の取材に、「始めた以上は、事件解決までやめるわけにいかん」と決意を語った。結成から3年。事件の風化を防ぐため、中谷会長ら会員は、「少しでも事件を思い出してほしい」と地道に声をかけ続けている。
清勝会は橋本さんの両親の友人らで構成、現在会員は約30人。中谷会長は橋本さんの父充史さんと同級生で、橋本さんに仕事を手伝ってもらったり、食事に行ったりする仲だった。橋本さんが美容学校に進んだ際は「ハサミを持ったら頭カットしてくれや」と約束したこともあった。
橋本さんが遺体で見つかったと知ったのは08年6月30日の早朝。知人から電話を受けた。「同姓同名やろ。『朝っぱらからふざけるな』と言われるだろうな」。軽い気持ちで充史さんの携帯に電話をかけた。
「ちょっと聞いたんやけど…」。「本当や」。返ってきた一言に、思考が止まったが、その後は疲れ果てた家族に寄り添い、葬式を取り仕切るなど支えた。
事件発生から1年後の09年6月には、「何かせんとおれん」と同じ思いを抱えた仲間と会を作った。チラシ配りにポスティング、ポスター張り……。手探りで活動を始めた。若者の集まる場所から探し、少人数でも回数を増やすか、回数は少なくても一気に大人数でやるべきかなど、試行錯誤でやってきた。「今でもやっていることが正しいかわからん。もっと効果的なことはないか」と悩みは今も尽きない。
充史さんは「妻と2人だけでも活動するつもりだったが、会の存在は心強く、力を与えてもらっている」と感謝する。
犯人は逃走したまま。中谷会長は、「わしらでさえ悔しく、悲しい。2人(両親)の心情を察することは無理」と思いやる。「事件が解決し会を解散できることが一番。それまでやめられない」と会員全員の思いを代弁した。
(2012年6月18日 読売新聞)