白馬の王子様 | ほんのり気になるし

ほんのり気になるし

限りなく透明に近いアホです。

以前勤めていた職場の先輩、『K先輩』と会った。
彼女は関西の人ではないので、とてもクールだ。
関西人の私から見ると、本当にカッコイイ。


変にはしゃいだりせずに、楽しむ時は楽しむ。
そして、ビックリするくらい鋭い点を突いてくるのだ。


K先輩は、私も知っている共通の友人の話をしだした。


「Nさんがね、名古屋の婚活パーティーに行ってるのよ」


K先輩の親友であり、私にとって先輩であるNさんが、
なんやら最近、やたら結婚したくてたまらないらしく、
何万円も金を出して婚活をしているという。
今日は名古屋で行われるパーティーに参加しているらしい。


私とK先輩は、呆れながらもその話で盛り上がった。


K先輩の話によると、Nさんは、かなり理想が高いという。
高学歴、高収入、高身長。もちろん顔はイケてないとダメ。
おまけに年下希望で、年上のおっさん風味なやつはパスだとか。
そんな男が婚活パーティーに参加してくるわけがないだろう。


もちろんのこと、お見合いやコンパの参加回数も半端ない。
そして、行くたびに「今回もハズレだ」と文句をたれて終わる。


あるお見合いで送られてきた、相手の写真を見て卒倒したという。
顔が最悪の『馬面(うまづら)』で気持ち悪過ぎて切れたらしい。
K先輩は、そんなNさんに対して


「その馬面の人、すごく色が白くて気持ち悪かったってさ。
でもそれこそある意味、本物の『白馬の王子様』だと思わない?」


と、クールな表情でサラッときつい事を吐き捨てた。さすがだ。
私は大声で笑いたいのを必死でこらえた。


そんなK先輩も、親から頼まれたお見合いを一度だけした事があるらしい。


「お店で待ち合わせしてたんだけどさ、見てビックリしたのよ。
その男ね、着物を着たガマガエルだったんだから」


と、これまたきつい第一印象の持ち方だ。そいつもかわいそうに。
気合いを入れたのかしらないが、その相手は着物を着て待っていたそうだ。
太っていて油ギッシュで、どうみてもガマガエルだったとか。


何故か容易にその和風ガマガエルの肖像を想像できてしまう自分も怖い。


「すぐに帰ったわよ。その無駄な時間は帰ってこないけどね」


私はそんなふうに毒舌を惜しげもなく披露してくれるK先輩が大好きだ。
この時も私は笑いをこらえすぎて、腹も肺も苦しかった。


「嫌ですよね。第一印象ですぐに動物にたとえられる相手なんて…」


K先輩に送る言葉は、これしか思いつかなかった。私の精一杯だった。