第1話 俺は番場の忠太郎
患者さんはいろいろだ。
体の大きな方もいれば、小さな方もいる。
リハビリをすすめるにあたり、その人の身体サイズに言及しなければならないことがある。
例えば、とても小柄な人に対して、小柄であるがゆえの注意点を伝える場合。
そんな時「小柄」という表現をストレートに使ってもいいものだろうか?
もし、そのことでひどく悩んでいたら。
もっと別の表現はないものか・・・
あった。「シンデレラサイズ」。
本来、小さな婦人靴のことだが、まあ転用できるだろう。
「シンデレラサイズのお方はですね…」。
和やかに治療はすすんだ。
では、男性はどうする?
来た。とても小柄な70代後半の男性患者さんだ。
どうするか?
とりあえずシンデレラでうまくいった。シンデレラ、おとぎ話、おとぎ話、一寸法師!
ダメだ。これじゃ、打ち出の小槌で頭を叩かれても文句は言えまい。
困った、う~ん・・・池野めだか!
もっとダメじゃん。
その時、患者さんが口を開いた。
「俺、番場の忠太郎だからよ」。
番場の忠太郎???
「あいつは小さいけど強いんだよ。山椒は小粒でもぴりりと辛いってね」。
おいおいホントかい。
ネタ元はどこやねん!と突っ込みたくなる気持ちをグッと抑え、ここは相手の助け舟に乗っかった。
「はい、その忠太郎さんのようなお方はですね…」。
和やかに治療はすすんだ。
でも、どうだろう。
「番場の忠太郎サイズのお方」じゃ一般化できないよね。
じゃあ「山椒は小粒でもぴりりと辛いお方」っていうのは?
ハハハ…。
未解決ファイルに眠ったままになっている案件だ。(結)
*全10回の連載予定