教え子のことはネタにしづらい、したくないと、先日書いたばかりですが、この話は自分に対する戒めとして残しておこうと思い、書くことにしました。

そもそも超困難なミッションでした。公立中学で平均点スレスレの生徒を、中２の1月から教えて、高専に合格させるという話。

やれば出来るのはわかっていました。

でも、出来ませんでした。時間不足じゃないのか、と思われる方は多いでしょう。でも、そうではありませんでした。

原因は、たくさんあります。生徒会の活動、部活、定期試験、運動会、夏休みの宿題、冬休みの宿題、ほかの学校の受験対策……そもそも教科書を学校に置きっぱなしにする「置き勉」の習慣、ワークを解く時に答えをノートにだけ(最悪の場合記号だけ)書いて次に解き直すときに全て忘れるという習慣、解法を丸暗記するだけで応用をしない悪癖、図形問題に寸法を入れない習慣、関数の問題でグラフを書かない習慣、わからない時にヒントを探さず当てずっぽうで考える癖、数えればキリがありません。

全て改善するよう指導しましたが、無駄に終わりました。なぜだと思いますか？

恐るべき理由です。

誰も私のようなことをいう大人が、学校に居ないからです。公立中学です。平均点の生徒を高専に受からせる力は公立中学の先生にはありません。いや、そもそも、公立中学の先生には、生徒の能力をあげる力はありません。もっと言えば、塾の先生にだってそんな力はないし、極論、私にだって、ないのです。

ただ言えるのは、私や塾の先生は高専の問題を解けますが、公立中学の先生には無理です。塾の先生は自分が教える科目は解けますが、ほかの教科は無理です。生徒は、塾の先生以上、私未満になる必要がありました。

しかし、結論からいえば、生徒はそれを望まなかったのです。ひとことでいえば、「みんなと同じ苦しさで、高専に受かろうとした」ということです。

だから、みんなと同じように、部活をし、生徒会活動をし、運動会に出て、夏休みの宿題をやり、冬休みの宿題もやり、過去問はギリギリになっても解かず、教科書をもらった時に全部読まず、置き勉をし、滑り止めの学校の課題を頑張り(そして失敗し)、キレイだがあとから読んでも何を間違えたかわからないワークノートを作り、丸暗記しか方法を知らず、応用能力がなくても解ける問題をたくさん解き、高専から目をそむけ続けました。

私はといえば、「このままではまずい」という気持ちが大きくなりこそすれ、いっこうに小さくならない状況に、冷や汗をかきつつ、ただ質問される問題の解法を解説することしか出来ませんでした。

完全にすれ違っていました。他人とは全く別の道を歩む覚悟が全くない生徒を、他人とは全く違う方法で教えてしまいました。

見抜けなかった私の不徳です。

人は他人と同じでありたいと思わないが、やることは同じ(またはそれより楽)でありたいと思う、そんなことを全く私は理解していませんでした。

後悔と反省しか出来ないでいます。

本人に会ったら、謝罪するつもりです。

不合格